日本商工会議所は4月21日、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会との連名による「最低賃金に関する要望」と、東京商工会議所との中小企業3団体の連名による要望をそれぞれ取りまとめ、公表した。
両要望書では、現下の経済情勢について、コロナ禍の長期化や資源価格・原材料費の高騰などによる悪影響を指摘。企業業績は「K字型」の回復を示し、二極化の傾向が顕著な状況となっている中、政府が掲げる「成長と分配の好循環」を実現するには、生産性向上や取引適正化を通じた企業による自発的な賃上げの促進が不可欠であり、「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」など、「政府による取り組みの粘り強い継続と実効性の強化が必要」との考えを表明した。
最低賃金に関しては、近年3%台の大幅な引き上げが続いていることから、多くの中小企業・小規模事業者から、「経営実態を十分に考慮した審議が行われていない」との声が聞かれると指摘。最低賃金は、法が定める三要素(生計費、賃金、支払い能力)に基づき、中央・地方の最低賃金審議会における公労使の議論によって決定されるものであることから、「労働者のセーフティネット保障として全ての企業に強制力を持って適用されるものであり、最低賃金の引き上げを賃上げ政策実現の手段として用いることは適切ではない」と訴えた。
具体的には、最低賃金が目指す水準などについて、「政府方針を示す場合には、その決定に際し、労使双方の代表が意見を述べる機会を設定し、経済情勢や賃上げの状況などを十分に反映したものとすべき」と骨太の方針に影響を受けた昨年のようなことがないよう要望。最低賃金の審議においては、「中小企業・小規模事業者の経営実態を十分に考慮するとともに、各種指標・データによる明確な根拠の下で納得感のある水準を決定すべき」との考えを示した。
加えて、日商・東商の要望では、「中小企業が自発的に賃上げできる環境整備に向けた取り組みの推進」「地域の経済実態に基づいたランク制の堅持」「改定後の最低賃金に対応するための十分な準備期間の確保」「特定最低賃金の廃止に向けた検討」の4点についても要望。今後、要望内容の実現に向け、関係各方面への働き掛けを強めていく。
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