2022年3月に131件認定された「100年フード」の中から、日本が誇る食文化を文化庁、有識者がリレー形式で紹介します。
丁野 朗
日本観光振興協会総合研究所 顧問
「100年フード」の連載が始まりました。初回は文化庁野添剛司参事官から、この事業の背景・意義と共に熱い思いを語ってもらいました。私は、この100年フードを選定する「有識者委員会」を委嘱され、他の3人の方々と、楽しい認定作業を担当しました。「楽しい」と書きましたが、認定作業を通じて、食と日本文化の多様性や奥の深さを改めて認識しました。
旧石器時代から現代まで、食・食文化は人類の歴史と共にあります。人類は何を食べ、どんな食の文化を生み出してきたのか。食材はどんなものか、献立や調理法、食作法はどうであったか。これら食文化は、米作や宗教の伝来、貴族社会から武家社会への変遷、そして近代西洋料理の伝播(でんば)、さらには現代の料理など、日本社会の歴史や文化と密接に関係しています。
同じ文化庁の「日本遺産」の選定にも携わっています。104件ある日本遺産には、少なくとも20件近い食の物語があります。鰊、鮭、鯖、鯨、紅花、ワイン、日本茶、しょうゆ、塩、酒、ユズ、砂糖、さらには海女(漁法)など誠に多様であり、読んでいるだけで楽しくなります。
認定100年フードの中で、特に親しまれている15件を審査員特別賞に選ばせていただきました。その一つ、土佐の「皿鉢料理」は、客を招いた宴会「おきゃく」で振る舞われる料理です。四国遍路の歴史と共に、市民に広く浸透した食のもてなし文化です。
1年間の本連載では、審査員の皆さまに分担してもらい、各地の多様で楽しい食文化を紹介します。お楽しみに。
100年フード
文化庁は、①地域の風土や歴史の中で創意工夫し地域に根差したストーリーを持つ②世代を超えて受け継がれてきた③地域の誇りとして100年を超えて継承することを宣言する団体が存在する、食文化を「100年フード」として認定しています。
100年フード公式ウェブサイト ▶ https://foodculture2021.go.jp/jirei/
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