「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」、「骨太の方針2022」の閣議決定について
資本主義のバージョンアップを掲げ、社会課題の解決と成長の二兎を追い、わが国経済の長期停滞の克服を目指す意欲的な政策パッケージが取りまとめられたことを高く評価する。2000年には世界第2位であったわが国の「1人当たりGDP」は、昨年、第28位にまで後退した。できるだけ多くの国民が危機感を共有し、現在の苦境を変革のチャンスとすべきであり、そのための道筋が示されたと考える。
「新たな官民連携」にも大いに期待したい。政府がリスクをシェアしつつ、市場の効率性を最大限に活用し、民間の投資を強力に後押ししてイノベーションを促し、経済の長期停滞から脱却する契機となることを強く望む。
エネルギーや原材料価格の高騰が続く中、適時適切な価格転嫁に向け、パートナーシップ構築宣言の実効性強化や取引適正化を推進すべく、新たな諸施策が織り込まれたことはたいへん心強い。わが国経済が、「コロナマインドからの脱却」と併せて「デフレマインドからの脱却」を目指すステージへと移行しつつあることも踏まえ、それら諸施策を着実かつ迅速に実行し、中小企業が自発的に賃上げできる環境を整備していただきたい。
なお、最低賃金の引き上げ額については、公労使三者構成の最低賃金審議会で、法定三要素(生計費、賃金、賃金支払能力)を考慮した議論を通じて決定すべきことが明記されたことを高く評価する。
エネルギーの安全保障と安定供給を目指す中で、産業のGXを真に日本の新たな成長につなげるためには、挑戦的で粘り強い取り組みと、現実的で柔軟な取り組みとが求められる。エネルギーに関するわが国の自然条件の不利を逆転すべく技術開発を加速するとともに、原子力発電に関して、安全最優先の早期再稼働と設備利用率向上に向けた取り組みを強く求めたい。
また、労働力の確保や将来不安の払拭のため、全世代を通じて給付と負担のバランスを考慮した、持続可能な社会保障制度の構築は必須であり、その実現に向けた議論においては、現役世代や事業主の負担増にも配慮することを強く望む。 (6月7日)
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