政府は7日、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太の方針)を閣議決定した。特集では、骨太の方針の概要を提示。「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」については、重点投資を行う4分野の具体策を示した。
Ⅰ わが国を取り巻く環境変化と日本経済
・ わが国を取り巻く環境変化(新型コロナウイルス感染症、ロシアのウクライナ侵略、気候変動問題など)や国内における構造的課題(輸入資源価格の高騰、人口減少・少子高齢化、潜在成長率の停滞、災害の頻発化・激甚化など)など、内外の難局が同時かつ複合的に押し寄せている。
・ 世界経済の不確実性が大きく増す中、わが国のマクロ経済運営については、当面、2段階のアプローチで万全の対応を行う。
【第1段階】
総合緊急対策を講じることにより、国民生活や経済へのさらなる打撃を抑制し、厳しい状況にある方々を全力で支援。コロナ禍からの回復を確かなものに。予備費の活用などにより予期せぬ財政需要にも迅速に対応し、国民の安心を確保。
【第2段階】
骨太方針2022や新しい資本主義に向けたグランドデザイン・実行計画をジャンプスタートさせるための総合的な方策を早急に具体化し、実行へ。
・ 大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を一体的に進める経済財政運営の枠組みを堅持。民需主導の自律的な成長とデフレからの脱却に向け、躊躇(ちゅうちょ)なく機動的なマクロ経済運営を行う。
・ 持続的な経済成長に向けて、官民連携による計画的な重点投資を推進する。危機に対する必要な財政支出は躊躇なく行い、万全を期す。経済あっての財政であり、経済をしっかり立て直す。そして、財政健全化に向けて取り組む。
Ⅱ 新しい資本主義に向けた改革
新しい資本主義に向けた重点投資分野
1.人への投資と分配・スキルアップ、多様な働き方の推進
・ 質の高い教育
・ 賃上げ・最低賃金の引き上げ(全国加重平均1000円以上)
・ 「資産所得倍増プラン」(NISAの抜本的拡充、iDeCo制度の改革など)
2.科学技術・イノベーションへの投資
・ 量子、AI、バイオテクノロジー・医療分野への官民が連携した投資の抜本拡充
3.スタートアップ(新規創業)への投資
・ スタートアップ育成5カ年計画を本年末までに策定(5年で10倍増)
4.グリーントランスフォーメーション(GX)への投資
・ 150兆円超の官民投資に向けた成長志向型カーボンプライシング構想の具体化やGX経済移行債(仮称)の検討
5.デジタルトランスフォーメーション(DX)への投資
・ テクノロジーマップの整備・実装、マイナンバーカードの普及
社会課題の解決に向けた取り組み
●民間による社会的価値の創造
・ PPP/PFIの活用などによる官民連携の推進
・ 社会的インパクト投資、共助社会づくり
・ イノベーションを促す競争環境の整備
●包摂社会の実現
・ 少子化対策・こども政策、女性活躍
・ 共生社会づくり、孤独・孤立対策、就職氷河期世代支援
●多極化・地域活性化の推進
・ デジタル田園都市国家構想
・ 分散型国づくり、地域公共交通ネットワークの再構築
・ 多極化された仮想空間へ
・ 中堅・中小企業の活力向上、債務増大への対応
・ 観光立国の復活、文化芸術・スポーツの振興
●経済安全保障の徹底
Ⅲ 内外の環境変化への対応
国際環境の変化への対応
●外交・安全保障の強化
・ 安全保障環境が一層厳しさを増す中、外交・安全保障双方の大幅な強化
・ 防衛力を5年以内に抜本的に強化
●経済安全保障の強化
・ 経済安全保障推進法の着実な施行
●エネルギー安全保障の強化
・ 省エネ促進、再エネ、原子力など脱炭素効果の高い電源を最大限活用
●食料安全保障の強化と農林水産業の持続可能な成長の推進
・ 食料安定供給、みどり戦略、輸出促進(2030年5兆円目標)、スマート農林水産業
●対外経済連携の促進
・ 国際連携の強化(DFFT、TPP11、RCEP、IPEFなど)
・ 対日直接投資の推進(2030年80兆円目標)
・ 外国人材の受け入れ・共生
防災・減災、国土強靱化の推進、東日本大震災などからの復興
国民生活の安全・安心
Ⅳ 中長期の経済財政運営、 Ⅴ 当面の経済財政運営と令和5年度予算編成に向けた考え方
・ 財政健全化の「旗」を下ろさず、これまでの財政健全化目標に取り組む。経済あっての財政であり、現行の目標年度により、状況に応じたマクロ経済政策の選択肢が歪められてはならない。必要な政策対応と財政健全化目標に取り組むことは決して矛盾するものではない。経済をしっかり立て直し、そして財政健全化に向けて取り組んでいく。
ただし、感染症および直近の物価高の影響をはじめ、内外の経済情勢などを常に注視していく必要がある。このため、状況に応じ必要な検証を行っていく。
・ 官民連携による計画的な重点投資の推進、単年度予算の弊害是正、効果的・効率的な支出(ワイズスペンディング)の推進とEBPMの徹底強化、税制改革。
・ 全世代型社会保障をはじめとする持続可能な社会保障制度の構築、その他歳出分野(社会資本整備、地方行財政、教育・研究活動の推進)の取り組みを実施。
・ 令和5年度予算において、本方針および骨太方針2021に基づき、経済・財政一体改革を着実に推進。ただし、重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない。
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