地域活性化や観光にとって、地域個性の象徴でもある歴史文化資源の重要性は言うまでもない。
▼2019年の文化財保護法の改正前後から、これまで保存を主としてきた文化財行政が、活用に大きくかじを切った。いわゆる「活用なければ保存なし」という表現は、その変化を象徴する言葉でもある。しかし、文化資源の活用の前提としての保存は極めて重要であり、「保存なければ活用なし」という側面も改めて重要である。
▼筆者は、15年に制度化された日本遺産や20年以降の文化観光推進法に基づく拠点計画・地域計画など、主に文化資源の活用、とりわけ観光や地域活性化に関わる仕事に携わってきた。
▼しかし、人口減少と過疎化などに伴う伝統祭事・芸能、伝統工芸の衰退、集落の崩壊など、文化資源の喪失が急速な勢いで進んでいる。維持できない文化財の登録抹消も同じである。
▼一方で、歴史文化資源や古民家の改装などによる飲食・宿泊施設やギャラリーなどへの転用など、地域活性化の動きも盛んである。大切なことは、こうした文化資源の保存や活用には、中長期的な計画の策定と、これらを地域コミュニティーと共有するという取り組みが不可欠である。
▼07年に提唱された「歴史文化基本構想」と、この構想を受けて市町村が策定する「文化財保存活用地域計画」は、こうした地域ぐるみの文化資源の保存・活用の大きなきっかけとなっている。21年末現在、全国58市町村の計画が認定されているが、その数は、いま急速に拡大している。
▼地域資源の保存と活用を担うのは地域住民である。文化資源を担う地域力の向上こそがこうした文化資源の保全・活用の基盤になる。
(観光未来プランナー・日本観光振興協会総合研究所顧問・丁野朗)
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