政府はこのほど、電力需給が厳しい状況にある中で、家庭や業務部門、国と地方公共団体など国民各層において夏場の省エネルギーを推進する「夏季の省エネルギーの取り組みについて」を決定し、公表した。毎年、夏と冬の省エネキャンペーン期間に、政府、地方公共団体、事業者、国民などに一体となった取り組みを呼び掛けているもの。今年は7月1日から9月30日まで、無理のない範囲で節電への協力を要請。各種コンテンツを用いて省エネ・節電についての周知などを徹底する。特集では、取り組みのうち特に産業界、地方公共団体、NPOなどに対する周知および協力要請について取り上げる。
政府は、6月7日に開催した「電力需給に関する検討会合」で「2022年度の電力需給に関する総合対策」を決定し、電力の供給対策として休止電源の稼働や追加的な燃料調達、再生可能エネルギーや原子力などの非化石電源の最大限の活用など、あらゆる対策を講じていくとともに、需要対策として、22年度の夏季は全国を対象にできる限りの節電・省エネルギーの協力を要請することを決定。政府自らが率先して節電・省エネルギーに取り組むとともに、これまで以上に各方面に省エネルギーの取り組みを呼び掛ける。
Ⅰ 国民一人一人の理解と行動変容の促進(略)
Ⅱ 産業界(関係団体、関係業界など)、地方公共団体、NPOなどに対する周知および協力要請
以下に掲げる事項について、産業界(関係団体、関係業界など)、地方公共団体、NPOなどに対し、事業者および家庭などに省エネルギーの呼び掛けを行うよう、協力を要請する。
その際、新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針に留意し、新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」の実践例を参考にしつつ、無理のない範囲で省エネルギーに取り組むべき旨を併せて周知する。
1.住宅・ビル等関係について
①住宅・ビルなどの省エネルギー対応
・ 住宅・ビルなどの新築、改修に当たっては、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)・ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化を進めること。
・ 断熱性能の高い適切な窓を選択すること。
・ ZEH―M設計ガイドラインや、ZEBパンフレット、ZEB設計ガイドラインなどを活用し、地方公共団体に対してZEH・ZEB化の検討を積極的に働き掛けること。
・ 住宅・ビルなどの販売または賃貸を行う事業者は、省エネルギー性能表示のガイドラインに基づき、エネルギー消費性能を表示するよう努めること。また、表示に際しては、ZEH―Mマーク、ZEBマークなどを活用して、そのメリットを積極的に発信すること。
・ ディマンドリスポンスに対応した時間帯別・季節別の電気料金メニューが選択できる場合はその活用に努めるとともに、エネルギー管理システム(HEMS・BEMSなど)の導入により、住宅の住まい方、ビルの運用方法の改善によるピーク対策および省エネルギーに努めること。
・ ビルなどにおいては、省エネルギー診断やESCO事業などを活用し、より高効率な設備・機器の導入や適切な運転方法への見直しなどにより、省エネルギー化を進めること。
②エネルギー消費効率の高い機器の選択・購入
・ 家電機器、OA機器などのエネルギー消費機器の購入に当たっては、省エネルギー性能の高い機器の選択に努めること。選択に当たっては、初期投資負担を伴うものの、これが中長期スパンで回収できることに留意すること。
・ 家庭用エアコンディショナー、照明器具、テレビジョン受信機、家庭用電気冷蔵庫、家庭用電気冷凍庫、温水機器および電気便座の購入に当たっては、より省エネルギー性能の高い製品を選択する観点から、省エネルギー性能の高い製品の選択に努めること。
・ 家庭用エアコンディショナーについては、省エネルギー性能(APF)の高い製品の選択に努めること。
・ エネルギー消費機器の製造・輸入事業者・小売事業者(インターネットによる販売などを行う事業者も含む)は、国際エネルギースターロゴや小売事業者表示制度に基づく表示により、省エネルギー性能に関するきめ細かな情報提供に努めること。
③機器の効率的な使用
・ 【冷蔵庫】 無駄な開閉を控えるとともに、開閉は手早く行う。食品の傷みに注意しつつ、適切な温度設定とする。放熱スペースの確保のため、周囲と適切な間隔を空けて設置する。
・ 【照明】 不要な照明はこまめに消灯。
・ 【テレビ】 部屋の明るさに合わせた適切な明るさで視聴。視聴しない時はこまめに消す。
・ 【冷房】 適切な室温管理(冷房の場合は室温28度目安)。エアコンのフィルターは適切に清掃する。新型コロナウイルス感染症を予防するため、換気扇や窓開放によって換気を確保。熱中症を予防するための策などを実施。
・ 【調理】 ガスコンロは、炎が鍋底からはみ出さないように調節。炊飯器は、タイマーを上手に使うなどにより、なるべく保温時間を短く。
・ 【給湯】 シャワーは不必要に流したままにしない。入浴は間隔を空けず、追い焚きの回数を減らす。
2.工場・事業場関係
①工場・事業場における省エネ法に基づくエネルギー管理の実施
・ 事業者全体としての管理体制の整備、責任者の配置および省エネルギー目標に関する取り組み方針などの策定を通じて、省エネルギーを推進すること。
・ 省エネ法の「工場等におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準」に基づく設備の管理標準の策定・実施など、適切なエネルギー管理を実施すること。
・ 電気の需給状況が厳しい時間帯から再生可能エネルギー出力制御が行われるなど、余剰再エネ電気が発生している時間帯へ電気需要のシフトを心掛けること。
・ エネルギー使用量が一定規模以上の事業者となった場合には、国へエネルギー使用状況届出書の届け出を行うこと。
②自主的な省エネルギーの取り組みの推進
・ 経団連傘下の業種をはじめとして、30年に向けた産業界の地球温暖化対策の自主的取り組みである低炭素社会実行計画を策定している事業者にあっては、その実現に向け、工場・事業場において技術的に最高水準の省エネルギー機器・設備の導入および設備のきめ細かな運転の管理などにより、省エネルギーの取り組みを徹底して推進すること。
・ 同計画について未策定の業種に属する事業者においても、参加する業界団体などと連携して計画の早期策定に努めるとともに、策定に至るまでの間も、使用していないエリアの消灯の徹底や空調における適切な温度管理を含め、自主的・計画的に省エネルギーの取り組みを徹底して推進すること。なお、新型コロナウイルス感染症を予防するため、換気扇や窓開放によって換気を確保すること。
③需給ひっ迫に備えた節電やディマンドレスポンスへの対応について
・ レベルに応じた節電行動が取れるよう、節電対策の事前の策定や連絡体制の構築を推進すること。
・ 小売電気事業者との経済的対価を伴うディマンドレスポンス契約が選択できる場合にはその活用に努め、電力需給ひっ迫に備えること。
3.運輸関係について
①運輸分野における省エネ法に基づくエネルギー管理の実施
・ 旅客輸送事業者、貨物輸送事業者および荷主においては、それぞれ省エネ法の基準に基づく取り組み方針の策定など、適切なエネルギー管理を実施すること。
・ エネルギー使用量が一定規模以上の事業者となった場合には、旅客輸送事業者および貨物輸送事業者は輸送能力届出書を、荷主は貨物の輸送量届出書を国へ届け出ること。
②公共交通機関の利用促進
・ 通勤および業務時、ならびに休暇におけるレジャーなどによる移動については、できる限り鉄道、バスなどの公共交通機関を利用すること。また、近距離の移動については、徒歩や自転車での移動を図ること。
・ 道路交通混雑の緩和のための時差通勤の促進に積極的に取り組むこと。
・ 公共交通機関の利用時には、会話は控えめにし、混んでいる時間帯の利用は避けること。
③エネルギー消費効率のよい輸送機関の選択
・ 自動車の購入に当たっては、環境性能に優れた自動車(エコカー)の導入に努めること。とりわけ乗用車については、電動車(HV、EV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)、燃料電池自動車(FCV)の導入を検討すること。
・ 貨物輸送に際しては、輸配送の共同化などによる積載効率の向上、鉄道や内航海運といった大量輸送機関の積極的活用など、物流の効率化を図ること。
④エコドライブの実践
・ 自動車を利用する場合には、エコドライブ10のすすめの実践、交通渋滞の軽減に資するシステムの利用などとともに、自動車の利用をできる限り控えることにより省エネルギーに努めること。また、バイオマス燃料や合成燃料等温室効果ガスの排出の少ない燃料の選択、使用に努めること。
4.その他
①ISO50001の導入検討
・ エネルギーマネジメントシステム規格(ISO50001)の導入を検討すること。
②省エネルギーに資する事業活動の合理化および従業員などの意識向上
・ 事業者などにおいては、事務の見直しによる残業の削減など、省エネルギーに資するような事業活動の合理化に努めること。また、新型コロナウイルス感染症対策として、在宅勤務(テレワーク)を推進するとともに、その際、照明の工夫や空調の効率化も図ること。
・ 従業員などに対し、省エネルギーに関する知識や技能を身に付け、自ら省エネルギーを実践するための研修・シンポジウムなどへ参加する機会を提供するよう努めること。
③地域における各機関の連携など
・ 地域の特性を踏まえた省エネルギーの取り組みを推進するため、ブロック単位で設置された地域エネルギー・温暖化対策推進会議などを通じて、各地域の政府機関、地方公共団体、経済団体、消費者などとの情報共有・連携を図ること。
Ⅲ 政府としての取り組み(略)
経済産業省 資源エネルギー庁 関連情報
無理のない省エネ節約 (資源エネルギー庁) ▶ こちらを参照
省エネ・節電メニュー (資源エネルギー庁) ▶ こちらを参照
ビルの省エネルギーガイドブック 2021/工場の省エネルギーガイドブック 2021 (一般財団法人 省エネルギーセンター) ▶ こちらを参照
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