Q インターネット通販事業を行っていますが、購入者の親から、当社に対して、高校生の子どもが親に無断で購入したものであるから、商品購入を取り消したいとの連絡がありました。この場合、当社としては、購入取り消しに応じなければなりませんか。
A 未成年者が法定代理人の同意を得ずに行った行為は、法定代理人において取り消すことができますので、この場合には取り消しに応じなければなりません。
なお、2022年4月1日より成年年齢が18歳に引き下げられましたので、18歳未満を未成年者として、民法5条2項の取り消しなどが取り扱われます。
未成年者との取引に注意
民法上、未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならず(民法5条1項)、法定代理人の同意を得ないで行った意思表示は取り消すことができるものとされています(民法5条2項)。対面取引であれば、取引の相手方が未成年であるか否かは、容貌や身分証明書の提示から判断することができますが、インターネット取引の場合、相手の容貌などは確認しないのが通常ですので、予期せずして、未成年者との取引をしてしまう可能性があります。しかし、インターネット取引だからといって、民法の行為能力の規定の適用が排除されるわけではありませんので、法定代理人の同意がない行為に関しては、取り消すことができることになります。
もっとも、民法5条3項の範囲の財産の処分は、法定代理人の包括的な同意があると認められるため、子どものお小遣いの範囲の少額の取引であれば、取り消される可能性は低いものといえます。
2022年4月1日より成年年齢が20歳から18歳に引き下げられ、18歳、19歳は、契約などの法律行為を単独でできるようになりました。そのため、18歳未満を未成年者として、民法5条2項の取り消しなどが取り扱われます。
総合判断される取消権
未成年者との取引において、未成年者が取引の相手方に対して、成年であるか、または法定代理人の同意があると誤信させるために詐術を用いた場合には、当該未成年者は当該意思表示を取り消すことができません(民法21条)。ゆ故に、インターネット取引においても、未成年者が成年であると偽って取引をした場合などには、詐術を用いたとして、取り消すことができなくなる可能性があります。
この点に関して、経済産業省の「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」では、例えば、「単に『成年ですか』との問いに『はい』のボタンをクリックさせる場合」や「利用規約の一部に『未成年者の場合は法定代理人の同意が必要です』と記載してあるのみである場合」には、取り消し権は失われず、取り消すことができると解されるとされています。
加えて、「未成年者の場合は親権者の同意が必要である」旨を申し込み画面上で明確に表示・警告した上で、申込者に生年月日など未成年者か否かを判断する項目の入力を求めているにもかかわらず未成年者が虚偽の生年月日などを入力したという事実だけではなく、さらに未成年者の意図的な虚偽の入力が「人を欺くに足りる」行為といえるのかについて他の事情も含めた総合判断を要するとされています。具体的には、「未成年者の年齢、商品・役務が未成年者が取引に入ることが想定されるような性質のものか否か(未成年者を対象または訴求力があるものか、特に未成年者を取引に誘引するような勧誘・広告がなされているかなども含む)及びこれらの事情に対応して事業者が設定する未成年者か否かの確認のための画面上の表示が未成年者に対する警告の意味を認識させるに足りる表示であるか、未成年者が取引に入る可能性の程度などに応じて不実の入力により取引することを困難にする年齢確認の仕組みとなっているかなど、個別具体的な事情を総合考慮した上で実質的な観点から判断される」ため、留意が必要です。 (弁護士・佐々木奏)
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