今年2月24日、ロシア軍がウクライナを侵略したプーチンの戦争は世界の政治と経済状況を一変させた。
▼第一に、北大西洋条約機構(NATO)は今後10年間の指針となる「戦略概念」を変更し、ロシアを戦略的パートナーから最大かつ直接の脅威国へと変えた。また、スウェーデンとフィンランドは今回の惨劇を目の当たりにしてNATOに加盟申請し、来年中には正式に認められるようだ。
▼第二に、小麦などの食料価格と天然ガスなどのエネルギー価格が暴騰した。それによってアフリカなどの発展途上国が苦しむとともに先進国でも消費者物価の上昇に伴い英国やフランスの地方や国政選挙において政権与党が敗北した。さらに、11月に予定されている米国の中間選挙でもバイデン政権にも大きな打撃を与えそうだ。
▼第三に、中国の習近平国家主席はロシアに対する西側の一致団結した経済制裁などの動きを見て、台湾への軍事侵攻の計画を再検討せざるを得ない状況に陥った可能性が大きいと思われる。
▼第四に、日本政府も今年度に見直しが予定されている国家安全保障戦略を練り直し、かつこれまで防衛費は国内総生産(GDP)の1%というめどがあったがこれを外して、NATO並みの2%に向けて増額するよう抜本的な改革を行う予定である。
▼今回、ロシアのような核大国で国連の安全保障理事会の常任理事国が侵略国となった場合には、世界は手も足も出ないことを思い知らされた。また、世界はウクライナを支援するのに疲れ気味であるものの、今もこの瞬間に地下壕などでミサイルの爆撃の音におびえたり、その炎から逃げ惑ったり、命を落としているウクライナ市民や兵が多数いることを忘れてはならない。 (政治経済社会研究所代表・中山文麿)
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