内閣府はこのほど、「2022年度経済財政白書~人への投資を原動力とする成長と分配の好循環実現へ~」を取りまとめ、公表した。「経済財政の動向と課題」「労働力の確保・質の向上に向けた課題」「成長力拡大に向けた投資の課題」の3章構成。賃金と物価が共に上昇していく経済の実現、脱炭素化やデジタル化に向けたIT人材への投資喚起の必要性などを提示している。
経済財政の動向と課題では、日本の経済状況について、「いわゆるスタグフレーションと呼ばれる状況にないが、継続的・安定的な賃金引き上げと需給ギャップの着実な縮小を進め、賃金と物価が共に上昇していく経済を実現し、デフレ脱却を実現する必要」との認識を示した。
労働力の確保・質の向上に向けた課題については、「労働生産性の伸びと物価上昇率に見合った賃金上昇の実現が重要」と指摘。人口減少に伴う労働投入量の減少が見込まれる中で、女性や高齢者などの一層の労働参加、すでに就労している者の労働移動を通じた一層の活躍促進が必要との見方を示している。
成長力拡大に向けた投資の課題については、「官民連携で計画的な投資を進め、脱炭素化やデジタル化に向けた投資を喚起していくことにより、エネルギー対外依存の低減などの社会課題の解決を付加価値創出に結び付ける必要」を強調。デジタル化の推進については、「脱炭素化や地方創生などの社会課題への効果も期待されるが、わが国ではIT人材がIT産業に集中するなどIT人材の量・質の不足がボトルネックとなっており、非IT企業におけるIT専門人材の確保に向けた賃金・処遇体系の整備など人への投資の強化が不可欠」との考えを示した(図1)。
脱炭素化政策の推進に向けた課題については、「国際社会の脱炭素への移行や原油価格高騰に伴う海外への所得流出の抑制、エネルギー安全保障の観点も考慮し、規制・支援一体型の投資促進が重要」と指摘。東日本大震災後の原子力発電所の再稼働が遅れているほか、石炭火力発電所の割合も高止まりしている点を指摘し、「地理的な制約から、陸上・洋上風力などの一部の再生可能エネルギー電源の導入も進みにくいとの指摘もあり、安全性の確保を前提に原子力発電の活用も検討していくことが必要」との認識を示した。
企業の取り組みにおける課題としては、上場企業が先行して脱炭素の取り組みを行っているものの、排出削減計画の実行に移っている企業は約4割にとどまっていること、非上場企業の7割以上が未着手であり、取り組みの推進に向けてはノウハウ・人員の不足、コスト増への対応が困難なことなどが課題となっている(図2)。
また、脱炭素化に向けて、費用増加への対策の必要性を感じる企業が6割を超えていることから、「サプライチェーン上で必要な価格転嫁が可能な経済環境を醸成することが重要」との見方を示している(図3)。
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