モノにブランドがあるように地域にもブランドがある。世界的ブランドで知られるルイ・ヴィトンは、1854年、旅行かばんの専門店としてフランス・パリのキャプシーヌ通りで創業。以来、170年近くもの間、人々に信頼され愛されてきた。そこには創業以来、今日に至るまでの歴史物語がある。
▼モノのブランドと同じく、地域が信頼され選ばれるためには、地域もブランドになる必要がある。そのためには、地域が自らの歴史文化を語れることが必要である。文化庁の日本遺産は、そのような試みの一つである。
▼3年に一度開催される越後・妻有「大地の芸術祭」が開かれている新潟県十日町市を訪ねた。ここは、2020年に「究極の雪国とおかまち~真説!豪雪地ものがたり~」が日本遺産に認定されている。人口5万人以上の都市では世界一の豪雪地として知られるこの地域は、雪に適した固有の住宅、食、織物、祭り、独特の景観美を育ててきた。豪雪と闘いながら、その恵みを生かした、この地域ならではの暮らし文化を生み出してきた。また日本最初の雪まつりなど、雪の中に楽しみさえも見いだす雪国文化も育ててきた。
▼このストーリーを生かすためには、まずは目に見える自然地形や建物などの固有景観を大切にし、物語に語られる織物や雪中食、祭りなどを「見える化」することが大切である。織物や食などは、地域固有の産業としても後世まで継承・発展させていくことが不可欠である。
▼旅人として訪れたまちに、地域の人々の思いや歴史の物語が感じられ、それがまちづくりにも息づいている。そんなまちにはたびたび訪れたくなる。それが、地域のブランドなのであろう。 (観光未来プランナー・日本観光振興協会総合研究所顧問・丁野朗)
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