はじめに
本日は、日本商工会議所第135回通常会員総会が盛大に開催されますこと、心からお祝い申し上げます。ベルリンで開催されているG7貿易大臣会合に参加しているため、会場に直接お伺いすることは叶いませんでしたが、こうしてごあいさつできることをうれしく思います。
経済産業行政における課題
足元では、新型コロナの影響に加え、ロシアによるウクライナ侵略に伴う原油価格・物価の高騰など、わが国経済は一層厳しい状況にあります。こうした状況だからこそ、地域の経済を支え、雇用を守る中小企業・小規模事業者の皆さまを全力でお支えしてまいりたいと考えています。
私は、8月に経済産業大臣に就任して以来、スピード感を持って経済産業行政の諸課題に取り組む決意で臨んでいます。例えば、価格の高騰に対しては、適切に販売価格に転嫁することが重要です。
政府として、パートナーシップ構築宣言への大企業の参加の拡大や実効性向上に取り組むほか、9月を「価格交渉促進月間」とし、下請事業者15万社に対するフォローアップ調査の実施、大臣名での指導・助言など、円滑な価格転嫁の実現にまい進しています。周知を図るため、既に全国約1600の業界団体に文書を送付したほか、私から動画で親事業者・下請事業者へ向けて価格転嫁・価格交渉を呼びかけております。全国の商工会議所にもご協力いただきたいと思います。
また、経済環境の変化を踏まえた資金繰り支援の拡充と収益力改善・再生・再チャレンジのさらなる加速にも取り組んでまいります。この度、「中小企業活性化パッケージNEXT(ネクスト)」を取りまとめ、事業再構築などの前向きな取り組みに対する資金需要に応えるため、伴走支援型特別保証の拡充などを行うとともに、積み上がった債務の返済負担軽減のため、借換保証の創設の検討も進めてまいります。今後は、このパッケージの施策を着実に実行し、中小企業・小規模事業者への支援に万全を期します。
加えて、事業者の事業継続を支援するため、政府として、返済猶予や条件変更を含む資金繰り相談に丁寧かつ適切に対応するよう金融機関に繰り返し要請しており、その結果、足元では、金融機関の条件変更率は約99%と、多くの事業者の申し出に応じている状況となっており、引き続き、こうした取り組みをしっかりと進めてまいります。
強靭で柔軟な経済の構築
コロナ禍とロシアのウクライナ侵略という二つの危機を乗り越えた上で、強靱(きょうじん)で柔軟な経済を構築し、経済を成長軌道に乗せていくためには、先手を打って未来の成長の種を蒔き、果敢に挑戦していく必要があります。このため、デジタル、グリーンなどの分野において、社会課題の解決を成長のエンジンにするべく、官も民も一歩前に出て、大胆に成長投資を拡大していくとともに、持続可能な地域社会を実現するための取り組みを進めます。
中小企業・小規模事業者の皆さまに対しても、ものづくり補助金、IT導入補助金などによる生産性向上への支援、事業再構築補助金による新たなチャレンジへの支援に加え、官民合同の支援チームやよろず支援拠点による成長志向の事業者への対話を通じた、単なる課題解決策の提供にとどまらず、経営者の行動変容を促す課題設定型の伴走支援などのささまざまなメニューを通じて、きめ細かな支援を行い、その挑戦・自己変革を後押ししてまいります。
成長を実現した上で、その果実を着実に分配することが重要です。価格転嫁・取引適正化の取り組みに加えて、賃上げを含めた「人への投資」を進め、消費者の購買力を高めることで、「成長と分配の好循環」による持続的な経済成長を目指します。
日商への期待
今般の難局を乗り越えるには、政府が思い切った投資をし、そして民間の投資を引き出していく、新たな時代の官民連携を進めていく必要があります。日本商工会議所と経済産業省は、これまでも中小企業・小規模事業者への支援、地域の活性化に向け、緊密に連携してまいりました。これまでの三村会頭のリーダーシップに心から感謝申し上げたいと思います。
私自身、新型コロナウイルス感染症が国内でまん延しはじめて以来、担当大臣として、その対策を進めてまいりましたが、その中で、日本商工会議所や各地商工会議所の皆さまとの連携は不可欠でした。休業や時短、テレワークの推進、ワクチンの職域接種、中小企業・小規模事業者の事業継続支援と、広範な分野において、皆さまに多大なるご協力、ご尽力をいただきました。この場を借りて、改めて感謝申し上げます。
今回、立場は変わりましたが、商工会議所の皆さまとは、引き続き良きパートナーとして、この難局の中で、雇用を守り、地域社会を支える中小企業の支援に共に取り組んでいきたいと考えています。
おわりに
最後に、日本商工会議所および各商工会議所のさらなるご発展と、本日ご臨席の皆さまのご健勝を祈念して、私のあいさつとさせていただきます。
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