日本商工会議所の三村会頭は16日、定例の記者会見に臨み、新型コロナウイルス拡大防止に向けた水際対策に関連し、政府が10月に入国者数の制限を撤廃するなどの緩和方針を検討していることについて「実現すれば大きな転機になる」と評価した。「全国旅行支援」開始の需要増に加え、円安の効果によるインバウンド消費拡大への期待も表明。「この政府方針に大賛成だ」と述べ、歓迎の意を示した。
三村会頭は、政府が検討している新型コロナウイルス対策で導入した水際対策の緩和方針を高く評価。10月以降に変更の可能性のある現在5万人に制限している1日当たりの入国者数の上限撤廃、個人旅行客の受け入れ解禁、米国などからの短期滞在におけるビザ免除、観光促進策の「全国旅行支援」の開始など具体的な事項について言及し、「これが実現すれば一つの大きな転機になるので大歓迎だ」と述べた。
観光関連産業など中小企業を取り巻く足元の経済情勢については、「コロナ禍に加えて、物価上昇、エネルギー不足などが重なり、企業の経営環境はかつてなく厳しい。中小企業の経営状況は二極化し、最も厳しい状況に置かれているのは、人流をベースとした飲食業・宿泊業などいわゆる観光を支える事業者だ」と指摘。また、「これ以上借金を増やすことに対し、恐怖に似た感覚を持つ事業者も多い。そういった方々にとって一番の支援策は、人々の往来が再開され、仕事が生まれることだ」と述べ、旅行需要拡大の意義を強調した。
世界的なインバウンド需要については、「世界経済フォーラムが5月に発表した『観光魅力度ランキング』で日本は1位を獲得するなど、外国人観光客からみれば日本は今、訪れたい国だ」と強調。「昨今の円安の効果でインバウンド消費が高い経済効果を生めば、最も厳しい状況に置かれている観光事業者を強力に支援することになるし、これこそが最も好ましい支援の形といえる。われわれは政府方針に大賛成だ」と述べ、歓迎の意を表明した。
わが国の中小企業数の減少、商工会議所の会員数の減少については、「会員数は日本全体の企業数の推移に合わせるように減少傾向を辿っており、1999年度末の163万者から足元(2021年度末)では123万者まで減少した」と指摘。「一方で、企業数に占める会員数の割合をみると、この間約32~35%で安定的に推移している」と述べた。
また、直近19年度末と20年度末の会員数が122万者から123万者に増加したことに触れ、「これは、日商と各地商工会議所が行っている政策提言活動や、新型コロナ対策をはじめとする、企業に寄り添ったさまざまな支援活動が評価されたものと認識している」と強調。「会員数はもちろん大切な指標だが、会員数の増減自体が問題なのではなく、多くの中小企業に評価していただけるような活動を、これからもしっかりと展開していくことに重きを置きたい」との考えを示した。
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