歴史的建造物が建ち並ぶノスタルジックなまちに年間約800万人の観光客が訪れていた小樽。しかし新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2020年度は260万人弱にまで減り、飲食店、宿泊施設など観光都市の事業所は大ダメージを被った。そこで立ち上がったのは設立間もない小樽YEGだった。
会頭の強い思いの下YEGを設立
「実は小樽YEGの歴史はたったの10年なんです」と語ってくれたのは、本年度会長の宮本章弘さん。
「設立当初から、小樽YEGの組織構成は同じで、メンバーの連携を強固にするための組織活性化委員会、地域活動事業の検討実施を図る生活環境委員会、そして小樽の基幹産業である観光についての課題解決や魅力の発信に携わる観光振興委員会の3本柱で活動しています。また、全国のYEGのほとんどは1期1年ですが、小樽は1期2年です。これは小樽YEGを立ち上げた小樽商工会議所の山本秀明会頭の強い思いで決定されており、1年では実現のできない事業活動を可能にしています」
市民の思いを受け継ぎまちのために汗をかく
観光都市として名高い小樽だが、有名なスポットである小樽運河は40年前に埋め立ての危機に直面したことがある。
「急速なモータリゼーションからくる渋滞緩和のため、運輸経路としての役目を終えた運河を道路化する都市計画が持ち上がりましたが、歴史的建造物保存を求める市民運動が起こり、運河は無事その一部を残すことになりました。今も多くの人を引き付ける小樽の景観とそれに根付く観光産業は、当時の市民が守り残してくれたものです。私たちはその思いを受け継ぎ、これからも観光のまちとして小樽を盛り上げたいという共通の思いを持って事業に取り組んでいます。観光業をなりわいとしているメンバーは少ないのですが、みんなまちのために、と汗をかいています」
コロナで激減した観光客 それでも活動を止めなかった
観光都市であるだけに、人の流れを止めるコロナによるダメージは大きかった。従来のPRだけでは観光客を呼び戻すことは至難と考えた小樽YEGは、よりライブ感をもってまちの魅力を発信できる動画制作に着手した。
「日本遺産に認定された『北前船』と『炭鉄港』、小樽文化遺産である『北海道の心臓と呼ばれたまち・小樽』をテーマにし、出来上がった3本の動画をYouTubeにアップしました。動画ならではの臨場感からまちの魅力をダイレクトに感じた人が、いつかは小樽に行ってみたいと思ってくれたらうれしいです」
さらに40ページ以上にわたるガイドブック「小樽観光ガイドブック」を作成、これらの動画も盛り込んだコンテンツにはさらに独自のアイデアが光る。
「小樽は日帰りの通過型観光客が多く、観光消費額が函館の半分であることが悩みです。そこで、それを解消するために近年欧州で流行しているアドベンチャートラベルに注目しました。旅に自然との触れ合いやアクティビティーをプラスする考え方です。小樽には歴史的建造物や食の魅力だけではなく、自然豊かな環境下でSUP(スタンドアップパドルボード)や乗馬などさまざまな体験ができる施設が多数あります。取材に時間をかけたので、気付いたらメンバーたちが皆、小樽通になり、地元への愛もより深まっていました」
現在はスマホのブラウザーを使って観光案内ができるサービスを開発し、さらに観光客が楽しめるよう活動をしている。次年度北海道ブロック大会の開催も予定されている小樽YEGから目が離せない。
【小樽商工会議所青年部】
会長 : 宮本 章弘
設立 : 2012年
会員数 : 60人
最新号を紙面で読める!