日本商工会議所の臨時会員総会で選任された小林健会頭は、11人の副会頭と共に総会終了後の就任記者会見に臨み、各地商工会議所、会員企業とのコミュニケーションについて、「地域とそこで活動している中小企業を大切にしたい。中小企業の成長が国の成長にもつながるという大局観を持って、会頭職を務めたい」と述べた。会見に同席した副会頭らは小林会頭の「現場主義」「双方向主義」の継承、「対話重視」の姿勢に歓迎の意を表明。小林会頭は「早速、年内に11の副会頭商工会議所のうち8カ所を訪問する。地域の実情や生の声を真摯(しんし)にお伺いしたい。顔を見て対話することが一番だ」と強調した。
小林会頭は、地域に根差した中小企業への支援について、「中小企業の割合は日本の全企業のうち99・7%を占める。また、中小企業の従業者は約7割、付加価値は約5割を占めている。地域経済の担い手はまさに中小企業だ」と述べ、「中小企業が成長・発展しなければ地方創生も実現できず、中小企業支援に注力することは正道といえる」との考えを示した。
地方の事情を踏まえた政府への意見具申に関しては、「地域ごとにさまざまな事情がある。それを踏まえた特色ある成長戦略を描く必要がある」と強調。「そのためには各地域のことをもっとよく理解する必要があり、全国9ブロックとのコミュニケーションを深化させたい」と述べた。
中小企業の賃上げについては、「昨今の厳しい収益環境を鑑みれば、原資を確保しづらいのが実情だ」と述べるとともに、「サプライチェーン全体で付加価値を高め、収益を上げて、それを適切に按分する形でそれぞれの主体が賃上げの原資を確保していくことが望ましい」と指摘。中小企業の生産性向上に向けて「中小企業自身が無駄をそぎ落とし、生産性を高めて、賃金原資を確保するよう努力することこそが継続的な賃上げの要諦だ」と述べた。
価格転嫁に関しては、「国民全体の機運醸成も必要だ」と強調。事業者の消費者に適正価格を求める勇気、スムーズな価格転嫁に向けた政府の支援策や商工会議所の支援も必要との見方を示すとともに、「いずれにしても、日本経済全体のパイを増やさない限りは、継続的な賃上げは難しい。そのためにも、デフレマインド・コロナマインドを何としても払拭したい」と述べた。
生産拠点の国内回帰を含めた供給網の整備については、「足元では円安が進んでいるが、単に価格競争力の向上という側面だけでなく、経済安全保障という観点からも、日本の基幹産業とそれを支えるサプライチェーンは、国内にも拠点を確保する必要がある」と考えを表明。「過去の円高局面では、中小企業は大企業のコストカット要請に協力してきた。円安になった今、大企業は中小企業との取引を適正化するだけでなく、生産拠点を国内回帰させ、その地域にしっかりと根を張るという形での還元も求められるのではないか」と述べた。
減速傾向が鮮明になっている世界経済の先行きについては、「現在、欧米は物価高に苦しんでおり、一番怖いのはスタグフレーションに陥ることだ」と述べるとともに、中国経済については、「3期目に入った習近平政権の安定を図るためには5%程度の経済成長率が必要だといわれており、コロナ対策や経済対策は、もう少し余裕のある政策が打ち出される可能性がある」と指摘。為替動向については、「2024年の米国大統領選までを見据えると、今の円安水準はある程度修正されるのではないか」との見方を示した。世界経済減速の日本への影響については、「時間をおいて表れるのではないか」との考えを表明した。
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