「どうしたらZ世代に受け入れられるか」と読者の減少に悩む地方紙幹部はため息をついた。1990年代半ばから2010年代序盤に誕生したZ世代は、デジタルネイティブであるだけに、将来の新聞購読層として取り込むのが容易でない。インターネットを通じた配信事業でも、この世代では苦戦が強いられているという。マスコミに限らず、Z世代の需要喚起があらゆる業界で課題になっている。
▼昨年末に老舗の和菓子店で、新年用の菓子を購入した。前に並んでいたのは20代のカップルだった。2人が去った後、店のスタッフに聞くと、若い世代の購入客が少なくないという。名の知られたこの店は「和菓子好き」の掘り起こしはしても、世代を意識したことはないそうだ。「あの店の菓子は味が落ちた、といった声が出ないように品質を維持することの方が大事だ」と言うのだ。
▼経営者が消費者の好みの変化に敏感になるのは当然だ。持続可能な開発目標(SDGs)の流れを意識するといったように、時代のすう勢を反映した商品を提供していくことも、企業には欠かせないといえよう。一方で、一時的な流行に影響されて過大な投資を行い、会社を傾かせた事例は数限りない。株主や取引金融機関から短期的な成果を求められ、判断を誤ったケースも多い。
▼自社の製品やサービスは、どんな顧客層を対象にしているのか。その顧客は一過性の存在なのか、それとも流行に関係なく固定的なものなのか。定期的にこうした視点で商品ごとに分類する作業が改めて望まれる。「結局、独自記事を数多く掲載することが読者層への訴えになると思う」と先の地方紙幹部は原点に立ち返る考えを強調していた。 (時事総合研究所客員研究員・中村恒夫)
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