Q iDeCo(イデコ)個人型確定拠出年金について、2020年の年金制度改正で、制度改正があったと聞きました。主な改正点を教えてください。
A iDeCo(イデコ)個人型確定拠出年金とは、任意で申し込むことで、国民年金や厚生年金保険等の公的年金にプラスして給付を受けられる私的年金の一つです。加入者自らが掛け金を拠出し、運用方法を選び、掛け金とその運用益との合計額を元に給付を受け取ることができます。2020年の年金制度改正で、iDeCoプラス(中小事業主掛金納付制度)の対象範囲拡大、脱退一時金受給要件の見直し、受給開始時期の選択肢拡大、加入可能年齢の拡大、企業型DC加入者のiDeCo加入要件の緩和等、制度改正が行われました。
iDeCoプラス対象の拡大
企業年金の実施が難しい中小企業等が、iDeCoに加入する従業員の掛金に追加で事業主掛金を拠出することができる「iDeCoプラス(中小事業主掛金納付制度)」について、実施可能な従業員規模が、100人以下から300人以下に拡大されました(2020年10月1日施行)。
脱退一時金の受給要件の見直し
iDeCoの中途引出し(脱退一時金の受給)は、通算掛金拠出期間が3年以下であること、資産額が少額であること等の一定の要件が必要でしたが、改正により、通算掛金拠出期間が3年以下から5年以下に見直されました(21年4月1日施行)。また、受給資格は、国民年金の保険料免除者に限られていたため、iDeCo加入者が海外に居住して国民年金の被保険者に該当しなくなった場合、加入もできず、また国民年金の保険料免除者にも該当しないため、脱退一時金の受給もできませんでした。改正により、国民年金の被保険者になることができない人で、通算掛金拠出期間が5年以下であること、資産額が少額であること等の一定の要件を満たす場合には、脱退一時金の受給が可能となりました(22年5月1日施行)。この改正により、短期在留の外国人が本国に帰国する際、一定の要件を満たせば、公的年金の脱退一時金とあわせてiDeCoの脱退一時金の受給が可能となりました。
受給開始時期の選択肢の拡大
公的年金の老齢年金の繰下げ受給年齢の引き上げにあわせて、iDeCoの老齢給付金の受給開始の上限年齢が70歳から75歳に引き上がりました(22年4月1日施行。ただし、1952年4月2日以降生まれの方が対象となります)。
加入可能年齢の拡大
これまでは60歳未満の国民年金被保険者が加入できましたが、改正により、65歳未満の国民年金の被保険者であれば加入することが可能となりました(22年5月1日施行)。例えば、60歳以上65歳未満の厚生年金保険の被保険者(国民年金第2号被保険者)や、60歳以降に国民年金の任意加入被保険者となった場合、iDeCoにも加入可能となりました。海外居住者も同様に、国民年金の任意加入被保険者となる場合には、60歳以降にiDeCoに加入できます。ただし、老齢基礎年金等の公的年金を65歳前に繰上げ請求した場合は、改正により加入要件を満たしても、加入はできません。
企業型DC加入者加入要件緩和
企業型DC加入者のうち、iDeCoに加入できたのは、iDeCo加入を認める規約の定めがあり、かつ事業主掛金の上限の引き下げを行った企業の従業員に限られていました。改正により、規約の定めや事業主掛金の上限引き下げがなくてもiDeCoに原則加入できるようになりました(22年10月1日施行)。ただし、企業型DCの加入者掛金の拠出(マッチング拠出)を導入している企業の企業型DC加入者については、マッチング拠出とiDeCo加入は同時にはできず、加入者ごとに選択する必要があります。 (特定社会保険労務士・村田 晴美)
最新号を紙面で読める!