政府は3月29日、第15回新しい資本主義実現会議(議長・岸田文雄首相)を開催し、6月に改定する「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」などについて議論した。会議に出席した日本商工会議所の小林健会頭は、中小企業の自発的かつ持続的な賃上げに向け、円滑な価格転嫁の継続実施を定着させる構造改革の必要性を強調するとともに、人手不足については「中小企業の成長制約となる懸念が高まっており対応が必要」と指摘。岸田首相は、「新しい資本主義の要諦」として、「賃上げを含む人への投資」「官民連携を通じた科学技術・イノベーションの推進」「民の活力を活用した社会課題解決」の3点を示し、重点的に取り組む考えを示した。
日商の小林会頭は、賃上げについて「中小企業が自発的かつ持続的な賃上げが可能となることが成長と分配の好循環実現の鍵」と述べ、「取引適正化に向けた業界自主行動計画の徹底、労務費転嫁に関するガイドライン策定などを通じて、円滑な価格転嫁の継続実施をわが国の取引慣行・商習慣として定着させる構造改革が不可欠」と強調。「パートナーシップ構築宣言」の実効性向上の取り組みの継続・強化も引き続き重要との考えを改めて示した。最低賃金については、「法に定める三要素のデータに基づき、公労使で議論を尽くすという大原則を忘れてはならない」とくぎを刺した。
人手不足については、「人手不足が中小企業の成長抑制となる懸念が高まっており対応が必要」と述べるとともに、「就労制約要因としての『年収の壁』が手取り所得の減少問題として顕在化している」と指摘。「当面の緊急対策とともに、人々の働き方や暮らし方の変化を踏まえた抜本的対策についても、腰を据えた議論が求められる」と述べた。また、生産性向上や新規事業に取り組む従業員のスキルアップを促す仕組みの充実強化や公的職業訓練の抜本的拡充も求めている。
岸田首相は、「新しい資本主義は、第1に、賃上げを含む人への投資、第2に、官民連携を通じた科学技術・イノベーションの推進、そして第3に、民の活力を活用した社会課題の解決が要諦だ」と強調。労働市場改革については、6月までに指針を取りまとめるほか、科学技術分野への戦略的な重点投資を行う考えを示した。
民の活力を活用した課題解決に向けては、GX、DXなどによる産業構造の転換、スタートアップ育成5か年計画の深堀りのほか、「経営者が、不振の事業から退出を決断した場合の退出支援について、M&Aを含め、多面的な検討を行う」との考えを表明。また、国際環境が不確実な中で、「ショックを危機へと拡大させないことが課題である」と指摘。「観光に加え、高度外国人材の呼び込みや企業立地促進を含めたインバウンド全体を促進する」と述べた。
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