政府は3月31日、2023~25年度までの新たな「観光立国推進基本計画」を閣議決定した。6年ぶりの改定となった新計画では、観光はコロナ禍を経ても成長戦略の柱、地域活性化の切り札、国際相互理解・国際平和にも重要な役割と定義。年のわが国の観光の在り方などについて具体的に目指す姿を提案した。日本商工会議所の小林健会頭は、同計画に示された方針に、観光の再生に向け、インバウンドの地方誘客や観光コンテンツの高付加価値化促進、観光DXの推進などが盛り込まれたことを評価。目標の早期達成に向け事業者などへの支援を求めるコメントを発表した。
観光立国推進閣僚会議に出席した岸田文雄首相は、「観光需要を効果的・持続的に根付かせるには、ビジネスや学術分野など、広い分野で取り組みを深化させる必要があり、地方、デジタル、環境といった切り口が重要」と強調。今回の新計画に基づいたインバウンド拡大を図るアクションプランを6月の骨太方針までに策定するよう指示した。
新計画では、観光立国の持続可能な形での復活に向け、観光の質的向上を象徴する「持続可能な観光」「消費額拡大」「地方誘客促進」の三つのキーワードに特に留意し、観光政策を推進。大阪・関西万博が開催される25年に向けて「持続可能な観光地域づくり戦略」「インバウンド回復戦略」「国内交流拡大戦略」の三つの戦略を総合的かつ強力に推進していく。
観光立国の実現に関する目標については、持続可能な形での観光立国の復活に向け、質の向上を重視する観点から、人数に依存しない指標を中心に設定。訪日外国人旅行消費額5兆円、国内旅行消費額20兆円の早期達成を目指すとともに、25年までの目標として、持続可能な観光地域づくりに取り組む地域数、訪日外国人旅行消費額単価、訪日外国人旅行者1人当たり地方部宿泊数などを掲げ、その達成のために政府全体として講ずべき施策などを定めている。
「持続可能な観光地域づくり戦略」では、25年までに「日本版持続可能な観光ガイドライン」(JSTS‐D)に沿った取り組みを行う地域を現在の12地域から100地域に増やす目標を掲げた。地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化に向けた宿泊施設のリノベーション支援、観光DX、高付加価値な旅行商品の造成など観光産業の革新、観光人材の育成・確保、DMOを司令塔とした観光地域づくりの推進などに取り組み、観光振興が生む地域社会・経済の好循環実現を目指す。
「インバウンド回復戦略」では、インバウンド旅行消費額5兆円の早期達成、訪日外国人旅行者数の3188万人(19年実績)超えを目指す。訪日外国人の旅行消費額単価については、19年比訪日外国人の25%増の20万円/人、1人当たりの地方部宿泊数については2泊にする目標をそれぞれ設定し、国際会議の開催件数はアジア最大の開催国となる目標を掲げた。インバウンドの回復に向けた集中的取り組みや受け入れ環境の整備に加え、消費拡大効果、地方誘客に効果の高いコンテンツの整備とともに高付加価値旅行者の誘致を促進するほか、MICE・IRの推進、戦略的な訪日プロモーションにも力を入れる。
「国内交流拡大戦略」では、引き続き、国内旅行実施率の向上、滞在長期化、旅行需要の平準化に取り組むとともに、関係人口の拡大につながる新たな交流需要を開拓。25年度までの目標では、日本人の地方部延べ宿泊者数を3.2億人泊、国内旅行消費額22兆円を掲げている。
観光立国推進基本計画(2023~25年度)主な目標
◆早期達成を目指す目標
・訪日外国人旅行消費額:5兆円
・国内旅行消費額:20兆円
◆2025年目標(質の向上を強調し、人数に依存しない指標を中心に設定)
・持続可能な観光地域づくりに取り組む地域数:100地域
・訪日外国人旅行消費額単価:20万円/人
・訪日外国人旅行者1人当たり地方部宿泊数:2泊
・訪日外国人旅行者数:2019年水準超え
・日本人の海外旅行者数:2019年水準超え
・日本人の地方部延べ宿泊者数:3.2億人泊
・国内旅行消費額:22兆円
※国土交通省資料を基に日商広報部作成
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