日本商工会議所の小林健会頭は6日、定例の記者会見で、中小企業の持続可能な賃上げについて「最も効果が高いのは価格転嫁だ。賃上げの継続性の鍵は価格転嫁力にかかっている」と述べた。日銀の黒田総裁在任中の金融政策については、異次元の金融緩和を「妥当だった」と評価。低金利政策による企業投資への影響については「低金利だけでは難しい。成長戦略を国と企業が一体で推進できるかどうかが重要だ」と指摘した。
小林会頭は、今年の賃上げについて、都内の会員企業から聞いた生の声を踏まえ、「賃上げ意欲は以前より相当上がっていると実感している」と指摘。「商工会議所としても、『賃上げできる企業はぜひ賃上げしていただきたい』と呼び掛けている」と述べた。
賃上げの水準については、「まだ様子見の企業もある。夏にかけて徐々に決まっていくと思うが、賃上げには期待している」との考えを表明。日商が3月末に公表した「最低賃金および中小企業の賃金・雇用に関する調査」結果で、23年度に「賃上げを実施予定」とした回答が約6割、「現時点では未定」という回答が3割程度あることに触れ、「4%以上の賃上げをすると回答した企業は約2割。高い比率の賃上げが実現する可能性は大いにある」との見方を示した。
価格転嫁・取引適正化については、「最近は国のみならず、地方自治体にも取り組みの輪が広がっていることは喜ばしい」と評価。「加えて、業界団体も積極的に取り組み始めてくれており、産業界全体で底上げをしていくという機運は大いに高まっている」と述べた。
持続的な賃上げに向けた課題としては、「生産性向上と賃上げ原資の確保、自分たちがつくったモノやサービスを適正な価格で販売することだ」と述べ、価格転嫁の重要性を強調。「これを毎年続けていけるよう産業構造の中に組み込んでいかないと来年から息切れしてしまう」との見方を示し、「賃上げの継続性の鍵は、価格転嫁力にかかっている」と 強調した。
中国における邦人社員拘束の影響については、「大変憂慮している」と述べ、両国の経済交流にひびが入ることは好ましくないとの考えを表明。理由の開示とともに「早い解放をお願いしたい」と述べ、早期解決を望む考えを示した。
日銀の黒田総裁の在任中の金融政策の評価については、「異次元の金融緩和は妥当だったと思う」と指摘。「負のスパイラルから脱することができたことは評価すべきだ」との考えを示した。
低金利政策が続いたことにより、企業の投資が促されたかどうかについては、「経営者がデフレマインドから抜け出し切れず、資金の滞留が起こった」と指摘。「企業の投資喚起は、低金利だけではなかなか難しい。成長戦略を国と企業が一体で推進していけるかどうかが重要だ」と述べた。
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