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テーマ別企業事例 新潮流となるか?サブスクリプションビジネスの可能性

事例1 「働く人のライフスタイルを豊かにする」ミッション実現にサブスクは必然

OKAN(東京都豊島区)

サブスクリプション(以下、サブスク)ビジネスで躍進する企業は増えつつある。その一社、OK ANの法人向けぷち社食サービス「オフィスおかん」は、2014年3月から5年間で、全国2000社以上で導入された。19年7月には組織改善のための従業員サーベイ「ハイジ」をリリース。企業、社会の問題解決に果敢に挑む。

「オフィスおかん」のメニューは、製造を担う全国のパートナー企業と考案し、社内の管理栄養士が監修、毎月入れ替わる充実ぶり

1品100円の惣菜をオフィスにお届け

「食品会社と誤解されることがあるのですが、食は目的ではなくツールの一つ。急速な少子化で人材不足が加速する日本で、企業や社会が抱える問題を解決できるように〝おせっかい〟を焼く。働きたくても働けないという人をサポートし、働き続けられる社会の実現を目指す。社名も、こうした思いからつけました」

そう語る代表取締役CEOの沢木恵太さんも、過去に働きたくても働けない時期があったという。働き方改革やワーク・ライフ・バランスが声高にいわれる以前、入社した会社は〝ワーク・ワーク〟で、食生活の乱れから体調不良に陥る。食の大切さを、身をもって体験した。このような課題の解決を考える中で、元同僚から食品添加物を極力使わずに長期保存可能な技術があると聞く。その後起業し、個人向け宅配サービス「おかん」をスタートさせた。これが2012年12月に設立したOKANの最初の事業である。さらに会社の理念「働く人のライフスタイルを豊かにする」の実現を加速するべく、2年後の14年3月に始めたのがぷち社食サービス「オフィスおかん」だ。

「企業が従業員に対して食をサポートすると考えた時に、まず思い付くのが社員食堂です。しかし、一部の企業を除いて、特に中小企業では実現するのは厳しい。そこで、食の福利厚生サービスと銘打って展開していきました」

普及の前提としてはサブスクがある。沢木さん一人からの起業だが、フランチャイズ支援や経営コンサルタント、Web事業に携わり、教育系ベンチャーのスタートアップメンバーとして参画してきた実績がある。経験、人脈を生かし、サブスクにおける画期的なシステムを構築していった。

1品100円。この価格に誰もが一度は目を、手を止めた。

導入企業2000社2000通りの利用法あり

「オフィスおかん」は5年で全国2000社が導入する大ヒットになるが、スタート時の導入企業は少なく翌月1社が導入する程度だったという。福利厚生の充実を提案しても、経営者にとっては費用対効果を実感しにくく、特に従業員にかける費用を「コスト」と考える企業に沢木さんの提案は響きにくい。そこで「コスト」ではなく「投資」と理解する企業に的を絞った。投資を考える企業の多くはスタートアップやベンチャー企業、IT企業という感触から、それらの事業所が多い東京・渋谷エリアを地道に回った。

「サブスクだからと特殊な営業戦略があるわけではありません。クーラーボックスをキャリーカートに乗せて1社1社地道に交渉していきました」と苦笑する。

メディアに紹介されたり、口コミで紹介されたりして、少しずつ導入企業が増え、渋谷から新宿、池袋、そして東京から関東へと広がる。外的要因で一気に火がついたわけではなく、毎年約2倍ずつ確実に導入企業を増やしていった。しかも驚くのは継続率97%という数値だ。安さだけではなく、「味」と「栄養」の満足度を満たし、かつ日本で認可されている約1500種類の食品添加物のうち必要最小限の30種類に抑えた。1品ずつ安くておいしい、健康的で安心・安全な惣菜を実現させる。さらに使い方にも〝幅〟を持たせ、オフィス街のランチ難民の解消になるばかりか、個々が自前のお弁当に1品加えたり、持ち帰って夕食のおかずにしたり、間食用のメニューも取りそろえた。

「何をどれだけ、どのように利用するかはお客さま次第。2000社2000通りが可能なのも継続率の高さにつながっています」

ワーク・ライフ・バリューで人材不足、離職を解決

そんなオフィスおかんのサービスを通じて、見えてきたのが業界、職種にかかわらず、従業員の離職に悩む企業の姿だ。ここから同社の新しい〝おせっかい〟が始まる。サブスクをベースに離職の理由を調査、分析、改善するサービス「ハイジ」だ。

「米国の心理学者、フレデリック・ハーズバーグ氏の説によれば、離職の要因は、モチベーター(やりがい)とハイジーンファクター(衛生要因)の二つ。日本企業はモチベーターに注力しがちですが、厚生労働省のデータを読み解くと、8割は後者の方です」

ハイジーンファクターの要因は健康、家庭との両立、人間関係で、このどれかに問題が生じ、働きたいけれど辞めなければならないという状況に陥る。これを、ハイジは定期的に従業員にアンケートを取って〝見える化〟し、問題の原因と改善の優先順位を明確にしていく。定期的なアンケートの実施で問題の根本原因が突き止められ、改善後の変化も観測できる。「万能薬ではなく病気に応じた投薬」と沢木さんが例えるように、「辞める理由が分からない」という企業にこそ、離職防止、従業員の不満解消にハイジは効きそうだ。

「ワーク・ライフ・バランスでは時間配分に重きを置きがちですが、一人一人の働き方、働く価値が多様化する現在、〝ワーク・ライフ・バリュー〟と言い換えて、それを可能にするツールとしてハイジを提案しています」と沢木さん。

19年7月のリリースから、さまざまな企業が導入し始めており、自社もワーク・ライフ・バリューの実験モデルとして職場環境の快適化を進めている。ノウハウが蓄積されれば、さらなる新規事業も見込める。同社のおせっかいは、今後ますます熱を帯びそうだ。

会社データ

社名:株式会社OKAN(おかん)

所在地:東京都豊島区南池袋1-16-15 ダイヤゲート池袋10階

電話:050-1746-8088

代表者:沢木恵太 代表取締役CEO

従業員:約100人

HP:https://okan.co.jp/

※月刊石垣2020年1月号に掲載された記事です。

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