日本商工会議所の立野純三中小企業委員長は7月日、中小企業庁に須藤治長官を訪ね、20日に取りまとめた意見書「地域を支える中小企業の自己変革による持続的な成長に向けた意見」を手交し、意見内容の実現を強く求めた。須藤長官は、「中小企業が気持ちよくビジネスする環境をつくることが、日本の課題の解決につながるという意識を持って取り組むことが重要だ」との考えを表明。「『自己変革』という言葉を重く受け止めた」と述べ、日商の意見に理解を示した。
意見書では、コストプッシュ型ではあるものの、30年ぶりの物価上昇と賃上げ機運の高まりという「停滞から成長」への転換局面を迎え、企業の投資意欲が高まっていると指摘。政府に今後5年間を経済好循環実現への集中期間と位置付け、民間の挑戦を後押しする政策の拡充、国際競争力の高いビジネス環境整備を要請した。
足元の課題克服へ早急に取り組むべき重点要望項目として、「価格転嫁の商習慣化など取引適正化の推進」「賃上げと中小企業の人材確保・定着の支援」「収益力改善・事業再生など自己変革への挑戦支援」の3項目を提示。具体的には「企業変革を促す事業承継の推進」「事業再構築や新分野進出などを通じた付加価値の拡大」「デジタル実装による生産性向上・業務効率化」「カーボンニュートラルへの取り組み支援」「物価高対策とエネルギー安定供給に資する原発再稼働」「活力ある労働環境の実現」などを要望している。
24年度施策については、「中小企業の自己変革による新たな付加価値創出・拡大」「地域を支える中小企業・小規模事業者の持続的な成長支援」「民間の挑戦を支えるビジネス環境および地域の成長基盤整備」の3点を強調。「中小企業の自己変革による新たな付加価値創出・拡大」としては、特に事業承継税制における一般措置の拡充や特例措置の申請期限の延長など、事業承継を促す施策の推進を求めている。また、事業再構築や新分野進出などへの「攻め」の投資の推進による付加 価値の拡大、産学官金連携によるイノベーション・新産業の創出、海外展開・輸出拡大による外需取り込みに向けた挑戦の後押しなどについても要望した。
「地域を支える中小企業・小規模事業者の持続的な成長支援」については、デジタル実装によるバックオフィス効率化、省人化・省力化投資への支援、省エネ・脱炭素化への支援強化、経営指導員による伴走型経営支援体制の拡充を要請しているほか、地域の需要・消費喚起と成長基盤整備による小規模事業者の所得拡大支援などを要望。「民間の挑戦を支えるビジネス環境整備」では、安全性確保最優先での原発再稼働や、経済安全保障法制に対応する上で生じ得る手続きやコスト負担などへの十分な配慮や製品の安定供給のための調達網の多元化対応などに係る負担軽減措置などを求めている。
日商では、意見・要望書を政府など関係各方面に提出。国の中小企業・地域活性化施策に反映されるよう、政府・政党などに強く働きかけていく。
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