政府は9月1日、わが国の感染症危機対策の司令塔機能を担う「内閣感染症危機管理統括庁」を内閣官房の中に設置した。統括庁の担当大臣は経済再生相が務め、トップの内閣感染症危機管理監には栗生俊一官房副長官が就任。平時の準備、感染症危機発生時の初動対応、政府対策本部の事務など政府全体の方針立案や行政各部の総合調整機能を一元的に所管し、有事の際、危機に迅速・的確に対応できる体制を整備するとともに、次の感染症発生に備え、政府の対応方針を示す「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」の見直しを行う。
4日には、政府行動計画の改定などを議論する有識者会議「新型インフルエンザ等対策推進会議」(議長:国立成育医療研究センター五十嵐隆理事長)が発足。計画改定に当たっての基本的視点として、「平時の備えの整理・拡充」「有事のシナリオの再整理」「感染拡大防止と社会経済活動のバランスを踏まえた対策の切り替え」「対策項目の拡充」などを示している。
対策項目の拡充については、現行の6項目「実施体制」「サーベイランス・情報収集」「情報提供・共有」「予防・まん延防止」「医療」「国民生活及び国民経済の安定」に加え、例えば、「水際対策」「検査」「保健所体制」「ワクチン」「治療薬」「物資」などの記載の充実について検討。また、デジタル化の促進、研究開発への支援、国際的な連携など、複数の項目に共通する横断的な視点を位置付けることなども議論する。
また、2025年度以降には、米国の疾病対策センター(CDC)をモデルに、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合して創設予定の「国立健康危機管理研究機構」で、「感染症の情報分析」「研究、危機対応」「国内外の人材育成・派遣」「国際医療協力」「総合診療、臨床研究」などを実施。政府対策本部、統括庁に科学的知見を提供する。
岸田文雄首相は、1日の統括庁の発足式で、「感染症危機管理においては、まず、感染症危機が起こる前からの平時の備えに万全を期することが極めて重要」と指摘。そして、「いざ感染症危機が起こった際には、政府内での迅速な情報共有、国民への的確な情報提供を行うとともに、スピード感を持った対応が求められる」と述べ、科学的なエビデンスに基づいた感染症対策を強力に実施する際には、「感染症対策と社会経済活動との両立にも配慮する必要がある」との考えを改めて表明した。また、職員に向け、「この3年余りの新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえ、関係機関における訓練の実施、必要な物資の確保などをはじめ、次の感染症危機に備えて万全の備えを構築してもらいたい」と訓示した。
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