久々に山陰の小京都と呼ばれる島根県津和野町を訪ねた。藩政の時代から残る重要伝統建造物群のまち並みは、1970年代以降の「アンノン族」の時代そのままで、美しさに改めて魅了された▼
しかし、平日ということもあり、どこかまち並みは精彩に欠け、にぎわいという点では昔の面影はない。しかも地域を代表する大型ホテルの廃業が続き、何となく寂しい雰囲気を感じてしまった▼
これは津和野だけではない。全国の数多くの観光地域が抱える共通の課題でもある。来年2月、水戸で開催される全国商工会議所観光振興大会の第1回大会は栃木県鬼怒川で開催されたが、そのテーマはまさに「鬼怒川再生(観光地再生)」であった▼
戦後の高度成長期を通じて大型化・大衆化した日本の観光は、90年のバブル崩壊から2008年のリーマンショックを経て大きく変容した。団体旅行が激減し、これに合わせた観光地モデルは変容した。事実、政府が掲げる観光立国推進基本計画でも、国内需要はすでに飽和状態で、この先の国内需要の成長は厳しいとの認識である▼
08年に発足した観光庁は「真水」の需要獲得を目指すインバウンドに大きくかじを切った。その是非はここでは触れないが、観光地域が新しい需要を創造し、地域の継承を図る必要があることは間違いない▼
津和野町は、17年に「津和野今昔~百景図を歩く」で日本遺産に認定、その構成資産である「鷲舞」(風流踊)も昨年12月にユネスコ無形遺産の登録が決定した。外資系を含む二つのホテルが再建され、地元DMOらによる個人客・外国人客の誘致が始まっている。古い観光地モデルの再生は、いまや喫緊の課題である
(観光未来プランナー・日本観光振興協会総合研究所顧問・丁野朗)
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