日本商工会議所の小林健会頭は10月4日、定例の記者会見で、「中小企業の経営は資材費やエネルギー価格の高騰に苦労しているが、価格上昇の半分以上は為替の影響だ」と述べ、円安で厳しい状況にあると指摘した。政府が検討中の経済対策については、「賃上げ税制や事業承継など人手不足の解消や中小企業の存続に関することがメインになる」と述べ、中小向け支援の重要性を強調。「(首相が示した)5本柱の政策の中から中小の経営に裨益(ひえき)する項目を中心に要望する」と述べた。
小林会頭は円安問題について、「中小企業は資材費、電気・エネルギーなどユーティリティー費用の高騰に苦労しているが、その原因は為替の影響が一番大きい。価格上昇の半 分以上は為替の影響だ」と強調。円安で利益を上げている大企業については、「パートナーシップ構築宣言を推進する立場から、為替相場の影響で不労所得として得た利益の1割くらいは中小企業との取引価格に反映してくれと言いたい」と述べた。現在の円安の原因について「基本的には日米の金利差、そして主に米国のインフレ、経済力などが相ま ったもの」との考えを述べるとともに、政府の為替介入の対応の遅れに疑問を呈した。
経済対策については、「中小企業の立場で申し上げると、経済対策の中では、賃上げ税制や事業承継といった人手不足の解消や中小企業の存続に関することがメインとなる。 全体的には、経済対策5本柱の中から、減税を含めて中小の経営に裨益するような項目をピックアップして政策提言を要望することになる」との考えを表明。与党内から所得税減税という声が出始めている点については、「ちぐはぐな印象を持つ。相当額の税収増の予想がある中で、所得税減税以外にも、もっと有効に使う手立てがあるのではないかと思う」と述べた。
また、政府が掲げる「資産運用立国」実現については、「投資に対する覚悟が中小企業と大企業では違う。中小企業の経営者は乾坤一擲(けんこんいってき)で勝負をかけざるを得ない」と指摘。「自社をジャンプアップさせるための投資については必要性を認識はしているが、失敗した経営者にある程度のケアも必要だ。投資によって企業が受ける影 響度合いは大企業と中小企業で大きく異なるため、政府が考えているいわゆる資産運用立国という言葉と、実際のわれわれの状況には距離があると感じている」と述べた。
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