Q 1年の有期で契約社員を採用します。正社員採用の場合は、就業規則で6カ月の試用期間を定めていますが、有期契約社員の場合も試用期間を設定できるのでしょうか。
A 有期契約でも試用期間を定められますが、1年契約の場合、期間は3カ月以内が限度でしょう。ただし、有期契約の試用期間中の解雇は、期間の定めのない場合と異なり、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において、①その者を引き続き雇用しておくことが適当でないと判断することが、解約権留保の趣旨、目的に照らし、客観的に相当であり、かつ、②雇用期間の満了を待つことなく直ちに雇用を終了させざるを得ないような特別の重大な事由が存在する場合しか、認められません。
試用期間とは
試用期間とは、企業が従業員を本採用する前に試験的に雇用する期間のことです。期間は法律で定められていませんが、1~6カ月程度の設定が通常です。
一般的に、使用者が採用前に労働者の能力や適性を全て評価することは困難です。そのため、労働者を実際に採用し働かせてみてから、使用者が労働者の適性を評価・判断し、本採用するか否かを決定するための期間として、試用期間が設定されています。三菱樹脂事件判決(1973年12月12日・最大判民集27巻11号1536頁)は、期間の定めのない労働者についてですが、試用期間は解約権が留保された労働契約の締結されている期間と判示し、試用期間中の解雇は一般の解雇の場合(労契法16条)よりも使用者に広い裁量が認められると判示しています。
有期雇用契約であっても、従業員としての適格性を判断するため、必要かつ合理的な期間を定める限度で試用期間を設けることは有効とされています。例えば、1年の契約期間中6カ月の試用期間が定められていたリーディング証券事件判決(2013年1月31日東京地裁判決・労経速2180号3頁)では、本採用の判定に要する時間は3カ月もあれば十分であるとして、3カ月の限度で試用期間の定めを有効と判示しました。
有期雇用契約と解雇
一方で、有期雇用契約は、期間の定めがない場合と異なり、「やむを得ない事由」がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において労働者を解雇できません(労契法17条1項、民法628条)。「やむを得ない事由」は労契法16条の場合よりも狭く、「期間満了を待つことなく直ちに雇用を終了させざるを得ないような特別の重大な事由」とされます。
裁判例の多くは、有期雇用契約の試用期間中に解雇する場合にも、労契法17条1項、民法628条が適用されるとしています。具体的には、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において、①その者を引き続き雇用しておくことが適当でないと判断することが、解約権留保の趣旨、目的に照らし、客観的に相当であり、かつ、②雇用期間の満了を待つことなく直ちに雇用を終了させざるを得ないような特別の重大な事由が存在する場合しか、試用期間中の解雇は認められません。
実務的に望ましい契約方法
有期雇用契約において、採用後に労働者の適性を評価・判断し、本採用するか否かを決定したい場合、有期雇用契約期間中に試用期間を設けるのではなく、最初の契約期間を試用期間と同じとし、その契約期間中、労働者に本採用に足りる適性があると認められた場合に限り契約を更新する、という更新条件を定めて契約する方が望ましいでしょう。
このような契約であれば、最初の契約期間中に労働者に本採用に足りる適性があると認められないとして契約更新しなかったことが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると判断されない場合でない限り、通常は最初の契約期間満了をもっての雇い止めが認められると思われます。よって、試用期間と同じ効果を期待できます。
(弁護士・上松 正明)
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