東海地方で企業の管理職を務める既婚女性は、家事に関しては徹底した合理主義者だ。高機能の外国製食洗機を愛用し「何年も食器を手洗いしていない」という。「機械ができることは機械に任せる」との考えは、2人の娘にも伝えている。働く女性にとっては「当てにならない配偶者」よりも、この考え方が現実的なのだ▼
都内在住の母親は長男が受験する予定だった有名中学の説明会で耳を疑った。入試担当者が「昼食はお母さんの愛情がこもった弁当が一番」と話し、給食や食堂のないことは利点だと強調したのである。「母親はフルタイムで働くのを諦めるか、睡眠時間を必要以上に削れというのかしら」▼
紙おむつが国内市場に出回ったころ「おむつかぶれが起きる」「手抜きではないか」などの批判があった。紙おむつの方が布よりも優れた面が多いと分かった現在では、そんな声はないし、話題になるのは処分時のマナーの方だろう。洗濯機の普及が、主婦を洗濯に伴う重労働から解放した事実を忘れてはならない。日本伝統の家族主義を尊重するあまり、母親像を固定していては、少子化が進む日本で重要さが増す女性の労働力を十分に生かすことはできないと思う▼
出産後、職場復帰した女性が昇進コースから外れる「マミートラック」が問題視されている。「フルタイムでなく時短勤務でも評価する」企業も出てきたが、何よりも働きやすい環境を社会全体で醸成することが重要だ。その際に、機械でも家族以外の人でも、遠慮なく利用できるように、周囲が理解しなくてはならない。企業から見れば、女性の働きやすさ向上につながる商品やサービス自体が商機になる点にも留意しておきたい
(時事総合研究所客員研究員・中村恒夫)
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