福井県敦賀市は人口約6万人、福井県南西部にあり、原子力発電所の所在地や、昆布の加工地として知られている。3月16日の北陸新幹線金沢︱敦賀間延伸開業を控え、まち全体が盛り上がりを見せる中、敦賀YEGは敦賀市高校生合同文化祭「TonTeen」を通じて、福井県内の高校5校の生徒同士のコミュニティー形成とイベントの立案・広報・運営をサポートし、新しい価値を生み出そうと日々奮闘している。その活動、思いに迫る。
このたびの能登半島地震により、犠牲となられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された全ての皆さまに心よりお見舞いを申し上げます。 被害を受けられた皆さまの安全と1日も早く平穏な生活に戻られますことを心よりお祈り申し上げます。
高校生を巻き込んでイベントを開催したい
整備新幹線の駅舎で日本一の高さ(37m)を誇る、完成したばかりの敦賀駅に驚きながら、敦賀商工会議所を訪れた広報ブランディング委員会は、「TonTeen」発案のきっかけについて、敦賀YEGの中村篤史会長に聞いた。 「新幹線の延伸は大人や観光客にはプラスですが、地元に住んでいる若年層のほとんどは高校を卒業し敦賀を離れると戻ってこないのが現状です。そんな状況だからこそ、高校生を巻き込んでイベントを開催したいという思いがありました」
2021年度、コロナ禍で高校生が自校の文化祭やイベントができない状況を目の当たりにし、合同文化祭を企画した。この事業は3カ年計画とし、最終的には独立を目指すこととした。コロナの感染状況と初めてのイベントということもあり、先生方の反応は芳しくなく、学校として参加するのではなく生徒が個人的に参加するスタイルとなった。6月には市役所も含めて、各校の高校生と会議を開催。イベント名称はTON(敦)、Teenager(10代)から、「TonTeen」に決まった。
福井県独自の緊急事態宣言が発令されたため、21年度の第1回は、高校生バンドや他校同士でのダンスユニット、ダンスチア部、動画コンテストの決勝をYouTube配信した完全オンラインでの開催になった。
コロナで失った青春を訴求
22年度の第2回開催では「合同文化祭実行委員会」を設定し、8人の高校生が実行委員に加わった。資金面では補助金としての枠が小さくなってしまい、予算確保のため、高校生を主体にクラウドファンディングに挑戦した。その結果、127万円を集めた。
高校生との協働は社会的にも注目され、新聞や地元ケーブルテレビ、BSよしもとなど報道番組にも取り上げられ、当日は出演者、来場者含め1000人が来場した。コロナ禍でリアル開催を経験できたことで、この実行委員会の中には、「教師を目指し、将来学校側からTonTeenに携わりたい」「経済学部で地域活性化をやってみたい」など、文化祭を通じて目標を持てたメンバーも多い。「学校間を超えたつながりや仲間づくり、自分の将来を考えるきっかけとなり、若年層の多くが敦賀に戻ってきたいと思ってもらえればうれしいですね」と中村会長は語る。
「TonTeen」を通じて高校生だけではなく敦賀YEGにも変化が
3カ年計画の最終年度となる23年度は計画当初、YEGのサポートなしでの実施予定だったが、初年度がコロナの影響で完全オンラインでの開催となったため、YEGが引き続きサポートをしていくことになった。イベントの認知度向上もあり、28人の実行委員が集まった。総じて参加してくれた高校生は向上心も高く、イベントを通じてスキルアップにつながった。最終的には来場者数が1400人を超え、予算も引き続きクラウドファンディングで136万円を集めた。TonTeenでは「学校間の壁を超え高校生自らが考え動く。地域や学校間での新しいつながりから高校生が主体となって敦賀を盛り上げる」という共通の目標がある。さまざまな高校生が交流でき、最高に楽しいTonTeenを次の代へこのバトンをつなぐ使命がある。これからもっと多くの高校生が共感していくことだろう。
また、そんな高校生たちをサポートしていくことで敦賀YEGの雰囲気も変わってきた。「新入会員が増えてきている。TonTeenやいろいろな経験を通じて、メンバーのキャリア育成をしながら、敦賀になくてはならない人材を育成していけるように頑張っていきたい」と中村会長は笑顔で話す。今や敦賀の高校生活になくてはならないイベントとなったTonTeen。こういった活動が全国に広がることを期待する。
【敦賀商工会議所青年部】
会 長 : 中村 篤史
設 立 : 1979年
会員数 : 60人
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