日本商工会議所の小林健会頭は2月15日、定例の記者会見で、中小企業の賃上げの見通しについて「日商の調査では、小規模事業者でも賃上げの機運は出てきており、良い傾向だ」と述べた。名目GDPがドイツに抜かれたことについては、「主要因は為替だ。一喜一憂する必要はない」と指摘。わが国の金融政策については、早期正常化に期待を示した。
日商の小林会頭は、今年の春季労使交渉における中小企業の賃上げについて日商の調査結果に触れ「24年度に『賃上げを実施予定』の中小企業は約6割で、そのうちの6割が防衛的賃上げである」と指摘。一方、「賃上げが『未定』とした企業が34・7%あるので、この部分がどれくらい賃上げに動けるか」との見方を示した。
また、「従業員数5人以下」「従業員数6~10人」企業でも「賃上げを実施予定」と回答した企業が増えていることから「小規模事業者においても賃上げ傾向が高まっている。企業努力を助ける形で、政府も労務費の価格転嫁などを支援しており、今年は勝負どころだ」と政府の支援策を評価。「昨年から今年にかけて、小規模事業者でも賃上げの機運は出てきており、良い傾向だ。賃上げを『検討中』としている経営者もそれを見てすう勢を感じる。結果、賃上げすべきだと思う割合は、昨年より増えるのではないか。大手ほどモメンタムは高くないが、中小企業全体としては昨年よりは高くなってきていると思う」との見方を示した。
日本の名目GDPがドイツに抜かれて世界4位に転落したことについては、「主要因は為替だ。為替が130円台に入れば逆転するだろう。今回の結果に一喜一憂する必要はあまりない」と指摘。「順位が変わったことを受け止める必要はあるが、基本的には各国の購買力平価で比較すべきだ」との考えを示した。
現在の株高傾向については、「一般的に言えば、株価が上がることは良いこと。問題はそれが乱高下することだ」との見方を表明。また、海外からの株式投資の増加、特に中国株からの日本へのシフトと円安の影響に触れ、「今の株価が日本経済の身の丈に合っているかは、株価と為替を合わせて考える必要がある」と述べた。
わが国の金融政策については、「日米の金利差はあまりにも大きく膠着(こうちゃく)化。金利差を動かさなくては、為替はなかなか元に戻らない。財務省が介入しても、すぐ戻るだろう」と指摘。また、日銀が「2%のインフレ率の持続的安定的な実現」目標の達成に向けた「確度の高まり」を示していることに触れ、「(マイナス金利政策の解除を)実行することを意識した発言だと解釈している」と述べ、早期正常化に期待を示した。
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