独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)はこのほど、2023年度「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」結果を公表した。企業が今後3年で最も重視する輸出先は、米国が中国を初めて上回って首位。中国で既存ビジネスの拡充や新規ビジネスを検討する企業は、全体の3分の1で過去最低となった。
23年の輸出見通しについて、前年比で輸出数量が増加と回答した企業は49.3%。横ばいは32.9%、減少は17.8%だった。増加と回答した企業の輸出見通しの要因は、「輸出先市場の需要の変化」が最多の65.2%。次いで「取引先との関係」(46.0%)「為替変動(円安)」(25.2%)の順で多い結果となった。一方、輸出が減少した企業(17.8%)も73.0%が輸出先市場の需要の変化を減少要因に挙げる。また、中国の日本産水産物禁輸措置、風評被害の影響で輸出が減少する見通しの企業も見られた。
今後最も重要と考える輸出先は「米国」が20.9%、「中国」が18.4%となり、比較可能な16年以降で米国が初の首位。前年調査で「中国」を選択した企業のうち4割強が中国以外の輸出先を選択した。
24年度の海外売上高については、前年比で「増加」を見込む企業の割合は55.7%。業種別では医療品・化粧品(72.4%)、化学(67.1%)、飲食料品(65.0%)、精密機器(60.9%)で6割以上が増加を見込んでいる。
今後3年間の海外進出方針については、すでに海外拠点を持つ企業の47.4%が「さらに拡大する」(前年度調査43.5%)と回答。海外で事業拡大を図る国・地域は、米国(28.1%)、ベトナム(24.9%)、中国(22.6%)、EU(18.6%)、タイ(17.5%)、インド(16.2%)の順で多くなっている。
中国との間で輸出入、投資、技術提携など何らかのビジネスを行っている企業の割合は61.5%。大企業では38.2%がすでに中国に進出している一方、中小企業の割合は8.2%にとどまっている。中国で既存ビジネスの拡充や新規ビジネスを検討する企業の割合は33.9%と同条件で比較可能な13年12月以降で最小となった。
サプライチェーンの見直しについて、23年以降、約7割の企業が、販売・調達・生産戦略において何らかの見直しを実施。コスト増を理由に調達先の分散が進展している。円安の進行は43%の企業にマイナスの影響、一方でプラスの影響は17%。望ましい為替レートは120~124円との回答が最多で、前年度調査から2.9ポイント増加した。
外国人材を雇用する企業の割合は51.4%で前年度調査(51.5%)から横ばい。常時雇用従業員数に占める外国人材の割合については、大企業に比べ、中小企業の方が高い結果となった。今後2~3年の外国人材の雇用方針では「今後増やす/新たに雇用する」が全体で28.4%。今後、新たに海外進出や海外ビジネスの拡大を目指す企業は、外国人材の雇用にも意欲的であることが分かった。
調査期間は23年11月14日~12月18日で、海外ビジネスに関心の高い日本企業(本社)9384社を対象にオンライン・郵送形式でアンケートを実施。3196社から有効回答があった(有効回答率34.1%)。
詳細は、https://www.jetro.go.jp/news/releases/2024/3a5af14b108501eb.htmlを参照。
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