明治25年に民芸品や工芸品の製造・販売で創業した、こけしのしまぬき。同社のメイン商品の一つであるこけしは、大地震が発生すると倒れてしまい、消費者の買い控えが起きていた。しかし、それを逆手に取ったアイデアを思い立ち、倒れると明かりがつく防災機能を搭載したこけしを開発。じわじわと注目を集め、SNSでも評判になっている。
地震で倒れにくい伝統こけしを目指して試行錯誤
こけしには大きく「伝統こけし」と「創作こけし」の2種類がある。前者は、東北地方の湯治場で土産物として売られるようになったもので、ろくろをひいてつくる木製の人形玩具を指す。産地によって異なる製作技法や形状・模様は代々師弟間で受け継がれ、宮城県では鳴子、作並(さくなみ)、遠刈田(とおがった)、弥治郎の4系統がつくられてきた。一方、後者は地域とは関係なく発展したもので、特徴や形状にとらわれない自由なデザインでつくられたものだ。こけしのしまぬきが扱ってきたのは、前者の伝統こけしである。 「こけしは200年ほど前に生まれたといわれ、何度かブームがありました。1度目は戦前で、2度目は団体旅行が盛んだった高度経済成長期です。さらに、この辺りの地域には入学や卒業、新築などのお祝いに伝統こけしを贈る文化があって、どの家庭にも一つや二つはあると思います」と同社社長の島貫昭彦さんは説明する。
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