日本商工会議所の小林健会頭は7日、定例の記者会見で、株高の傾向が続いていることについて、「株価上昇の恩恵を受ける大企業には、その恩恵を中小企業にも及ぼしてほしい」と期待を示した。中小企業の持続的な賃上げに向けては、「中小企業にとって労務費の転嫁は非常に大事な部分であり、全国的に展開していきたい」との考えを表明。日産自動車の下請法違反問題については、「極めて遺憾だ。社会的な影響が大きく、経営トップが説明する責任はあると思う」と述べた。
小林会頭は、株高について、「日本経済が評価されているということで結構なことだ」と指摘。「資金が日本企業に入ってくることで流動性も高まり、それを国内投資、主に設備投資などに企業が振り向ける余力が出て経済の好循環に寄与する」との考えを示した。
中小企業への影響については、「中小企業は非上場企業が多く、全般的には間接的な影響しか受けられないという面がある」との見方を表明。「株価上昇で相当な恩恵も受ける大企業には、その恩恵を中小企業にも及ぼしてほしい」と期待を示した。
中小企業の賃上げの見通しについては、「日商の調査で2024年度に『賃上げを実施予定』の中小企業は約6割で、賃上げが「未定」とした34・7%の企業が賃上げ予備軍だ。一方で、規模が小さくなるほど賃上げの実施予定は低い」と指摘。「賃上げ全体についていえば、まずは自社の変革、生産性の向上を行い、付加価値を上げ、そこから追加の人件費を払っていくということが本筋だ。これを中小企業は一生懸命やっている」と述べた。
価格転嫁については、「パートナーシップ構築宣言企業も4万787社(3月1日現在)となり、運動の広がりをみせている。材料費の転嫁については成果も上がっている」と指摘。一方で、労務費については「材料費のようにはいかない。価格協議に応じる割合は約7割だが、労務費増加分の4割以上を転嫁できた企業は34・7%と非常に低く、苦戦をしているのが実情だ」と述べた。
政府の取り組みについては、昨年11月に公正取引委員会が示した労務費の価格転嫁指針を高く評価するとともに、「公正取引委員会、経産省、中小企業庁も一生懸命に取り組んでおり、業界団体も非常に協力的だ」と指摘。「中小企業にとって労務費の転嫁は非常に大事な部分であり、全国的に展開していきたい」との考えを示した。
日産自動車の下請法違反問題については、「極めて遺憾だ。社会的な影響が大きく、経営トップが説明する責任はあると思う」との考えを表明。「今回は、購買担当者だけの責任ではない。企業は購買担当者を評価する新たなシステムをつくる必要があるのではないか」と述べた。
また、「パートナーシップ構築宣言」の取り組みに触れ、「大企業にはその趣旨を実行してほしい」と強調。「大企業のトップには、この機に原点に立ち戻り、下請け企業との共存共栄を真剣に考えることは、自社の社会的な責任であるということを肝に銘じてほしい」と述べた。
米国の大統領選挙と今後の日米関係への影響については、「米国の国民性を測る尺度になる。加えて、アメリカの三権分立によるチェックアンドバランスが重要だ」と指摘。「今までは、議会と司法と大統領の間でチェックアンドバランスが機能していたが、現在は、司法が大衆的になった。米国の一番良いところが失われつつあると感じており、私は非常に危惧を抱いている」と述べた。
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