日本商工会議所の小林健会頭は21日、定例の記者会見で、日銀の金融政策変更について、「出口の一歩を踏み出したことは評価すべきだ」と述べた。日本の株高傾向については、「最も大きいのは世界的な金余りだ。投資先が縮まり中国などから投資資金が日本に集まっている」と指摘。円安の状況については、マイナス金利政策を解除しても追加の利上げは急がず当面は緩和的な環境を続ける日銀のスタンスに触れ、「米国も利下げ時期を慎重に判断している。日米の金利差がしばらく続くという思惑でマーケットが動いている」との見方を示した。
連合の春季労使交渉第1次集計で、中小企業も4%を超える高水準だったことについては、「非常に良い傾向だ」と評価。「日銀の姿勢から、金融面の大きな変化は当面ないという前提で言えば、あとは、賃上げの原資がどれくらいあるかということに尽きる」と述べた。
今後、本格化する中小企業の労使交渉に向けては、「われわれとしては、これから賃上げを検討する企業で余力のある企業は賃上げしてほしい。賃上げ予定の企業は6割超、検討中は2~3割ある。検討中の経営者には付加価値を上げるための政府の施策を大いに利用してほしい」と強調。「今は中小企業の出番であり、中小企業が主体になって良いサイクルを回していくことに、やりがいを持っていこう、と申し上げたい」と述べた。
実質賃金の今後の見通しについては、「中小企業の賃上げ結果が5、6月あたりに出て、所得減税などが実施され家庭の収入は、夏ぐらいからある程度増える。局面としては物価上昇よりも収入が上回ると思う」との見方を表明。「問題は来年も賃上げを続けるかどうかだ。メディアの報道も重要となる。『実質賃金はプラス』という報道で、消費者のマインドは変わってくる」と指摘した。
また、3月15日に、能登半島地震の被災地である輪島、珠洲、七尾商工会議所と、能登空港に開設した事業者支援センターなどを訪問したことに触れ、現地の状況やヒアリング内容などを報告。「最も強く感じたことは『人が戻るか』ということだ。住人に戻ってもらうためには、希望が持てる復興計画をいかに早く立てるかが課題だ」と述べた。支援センターについては、「全国の商工会議所の経営指導員が応援出張している。本当に感謝したい」と謝意を表明した。
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