本年1月、「人口戦略会議」が人口減少問題に国を挙げて取り組むべきと提言した。その中の指摘にあるように、「子育て期」の環境整備が必要であることは論をまたない。しかし加えて、「子育て期後」の義務教育も人口戦略の中心に位置付けるべき重要な課題だ▼
初等中等教育は社会人として自立する基礎づくりをする場だ。今、その教育の現場が多くの課題を抱えている。教職員の長時間労働や人間関係によるストレス、児童・生徒の不登校やいじめ、家庭の貧困や児童虐待、そして外国人対応や特別支援体制の不備などだ。また、非常勤講師の採用が増加している。短期間の勤務になりがちなため、そのしわ寄せは児童・生徒に及ぶ。まさに学校は日本社会の縮図といえる。さらにこの事態がメディアで取り上げられ、教員を志望する学生の減少が状況の悪化に拍車をかけている▼
困窮した状況にある学校を支援するために、産業界としてもできることは多い。教育業界が教育委員会や学校と連携し、専門性の高いサポートを迅速に提供することは可能だろう。また、企業内には教員免許を取得している人もいるはずだ。有資格者を一定期間、教育の現場に出向させ、また、第二の人生を教育に捧げたいとする40代や50代の社員に学校経営や教育に関わらせることもできる▼
企業はこれまで、子どもの教育を家庭や学校に一任してきた。しかし、このやり方は人口が減少する日本に合わなくなっている。豊かな義務教育で育った子どもたちは、直に日本の社会をけん引する人材となるだろう。となれば、産業界も学校教育を支えていく必要があるのではないか。義務教育に対する産業界の関心が高まることを期待する(NIRA総合研究開発機構理事・神田玲子)