静岡商工会議所や静岡おでんの会、静岡市ホテル旅館協同組合などで構成する静岡おでん祭実行委員会は3月1~3日、静岡市葵区役所前青葉シンボルロードで「静岡おでん祭2024」を開催した。静岡県内のおでんの店47店舗と、富士宮、青森、陸前高田、石巻、東京都北区、富山、豊橋、小浜、姫路といった全国のご当地おでんの店9店舗が出店し、過去最大の出店数となった。
会場には3日間で合計32万人以上に上る来場者が訪れ、想定を上回る活況を見せた。また、会場では能登半島地震の被災地支援の一環として、金沢おでんのレトルトパックを数量限定で販売し、被災地支援募金も受け付けた。金沢おでんは各日とも開始15分程度で売り切れ、来場客の関心の高さがうかがわれた。
静岡おでんは、「しぞ~かおでん」と呼ばれ、地元住民のソウルフードとして親しまれている。全てのおでん種が串に刺さっており、牛すじでだしをとった黒いスープで煮込むことが特徴。だし粉(サバやイワシなどの削り節)と青のりをかけて食べるのが一般的である。もともとは屋台や駄菓子屋で販売されることが多かったが、最近ではそば屋や居酒屋でも提供されるようになり、おでんバーも増えている。提供する店舗は、静岡駅周辺だけでも160軒以上あるといわれている。
おでん種は、焼津港で水揚げされたサバやイワシの骨まで使った「黒はんぺん」、コリコリとした食感の「ガツ(豚の胃)」など、個性的なものが多い。ルーツは大正時代にまでさかのぼり、当時廃棄処分されていた牛すじや豚モツを、捨てずに煮込む材料としたことに始まるとされている。
静岡おでんは、文化庁の「100年フード」にも認定されている。これは地域で世代を超えて受け継がれてきた食文化を認定し、継承していくことを目指す制度。認定のためには、①地域の風土や歴史・風習の中で個性を生かしながら創意工夫され、育まれてきた地域特有の食文化であること、②地域において、世代を超えて受け継がれ、食されてきたこと、③その食文化を、地域の誇りとして、100年を超えて継承することを宣言する団体が存在すること、の3条件を満たさなければならない。静岡おでんは2021年度に認定され、有識者特別賞も併せて受賞している。
来場客からは、「お店がたくさんあって良かった」「お得に感じ、たくさん食べ歩きできて楽しかった」と出店数の多さを評価する声が聞かれたほか、「県外のおでんもいろいろあり良かった」「静岡のおでんだけではなく、震災で困っている地域の支援も含め、おでんを食べられてうれしかった」と、全国から出店があったことを評価する声もあった。