イランは、先月13日に、イスラエル本土に対して、約300回にわたるドローン(無人機)やミサイルによる大規模な攻撃を行った。すわ第5次中東戦争かと、世界に激震が走った▼
このイランの攻撃に対して、かねてイスラム組織ハマスのせん滅を公約していたイスラエルのネタニヤフ首相は、同月19日に自衛権の行使と称して、ドローンを使ってイラン本土への報復攻撃を行った。米当局者の報道によれば、イスラエルはミサイル3発を発射しイラン中部イスファハン州の核施設のある周辺のレーダーサイトなどを爆撃した▼
そもそもイランの大規模な攻撃の原因をつくったのはイスラエル自身ではないか。イスラエルは昨年10月のハマスのイスラエルに対する急襲の背後にイランがいるとみていた。そして、先月の1日に、イスラエルはシリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館周辺への空爆を行い、イラン革命防衛隊の幹部7人を殺害した▼
イスラエルはイランの核開発計画は自国の存続に関わる重大な脅威と見なしている。一方、イランは米国の離脱によって機能不全に陥った核合意を逸脱して、秘かにウラン濃縮を進めてきた。もし、イスラエルがイランの核施設そのものを攻撃するなら、イランもイスラエルの核施設に対し報復攻撃を行うと公言している▼
これまでの両国の攻撃はいずれも抑制的なものであり、共に全面的な戦争への突入は望んでいないように見受けられる。しかし、仮に、イスラエルとイランが核施設の本体を空爆し合うなどした場合には、両国の本格的な戦争に発展しかねない。今後とも、国際社会は両国の動きを注視し、全面戦争に陥らないように一致協力して適切に対応したい
(政治経済社会研究所代表・中山文麿)
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