日本商工会議所の小林健会頭は5月9日、定例の記者会見で、円安水準が続く為替相場について、「円安の進行には、特に中小企業は困っている。物価に影響しないわけがなく、輸入する材料のコストや電気・ガスなど全て影響を受ける。資源高と為替が相乗的に響いており大変憂慮している」と述べ、為替相場が与える中小企業への影響に懸念を示した。
小林会頭は為替相場について、「輸出割合の大きい大企業を中心に円安の恩恵を享受しているところもあるが、中小企業の現場からは『何とかならないか』という声が聞こえてくる」と中小企業の苦境について言及。また、「国内投資が増えるのではないかという期待もあるが、海外で上げた収益は海外で再投資することが一番安全であり、しかも当面は円安傾向が続くと考えると、収益を円に換えて国内投資に向ける力はどうしても落ちる。国内投資の伸びが減るということは、日本経済への影響が大きく憂慮している」と強調した。さらに、「国の通貨はどうあるべきかということをもう一度よく考えてほしい。そして堂々と通貨操作を行えばよい。あらゆる手を使って産業界が見通しやすい経済環境をつくることが国の役割」との考えを示した。
賃上げについては、「連合の5回目の春闘中間集計結果の大手5・17%、中小4・66%はいい数字。中小・零細は今まさに賃上げ交渉の最中であり、予断は許さないが、良い傾向が続いている。中小にも賃上げの動きが広がってきていると前向きに受け止めており、これが続けばいいと思う」と評価。「問題は組合がないより小さい規模の企業だが、私から企業経営者に申し上げたいことは、余力がある企業はできるだけ賃上げをしてほしいというお願いだ。これは今までもしてきたし、これからもしていく。その各社の努力が為替の円安で、全て『賽(さい)の河原の石積み』になってしまうということがないようにしたい」と述べた。
賃上げに不可欠な生産性向上については、大企業と中小企業の実質生産性の伸び率はほぼ同じだが、中小企業は価格転嫁がマイナスであるため、相殺されて名目付加価値額がゼロとなっている点を指摘。下請け構造などを見直し、少なくとも価格転嫁のマイナスをゼロにすることで、「中小企業が引き上げた生産性の分は、そのままプラスの付加価値額として維持できる状態にすべき」と訴えた。
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