小野田商工会議所(山口県)はこのほど、2022年に製造が中止されていた銘菓「せめんだる」の復刻を目指し、市内の社会福祉法人「健仁会」が運営する店舗が販売を開始した。
「せめんだる」は、明治時代に小野田地域でセメントを運搬するために使用されていた木製のたるを模したもなかの中に、セメントに見立てたあんこをぎっしりと詰め込んだ和菓子。セメント産業とともに日本の近代化の先駆けとして発展した同市で1950年代に誕生した。セメント産業は同市の象徴として、人々にとって、身近な存在だった。そのため、セメントを運ぶたるの形をした「せめんだる」も山陽小野田市の伝統のお菓子として長年人々に愛されてきた。
しかし、コロナ禍の2022年に製造元の老舗和菓子店が閉店し、「せめんだる」は惜しまれつつ姿を消してしまった。その後、同所は「せめんだる」の商標を買い取り、健仁会運営の食パン専門店で製造販売を開始。製造に当たっては、つくり方や機械などが引き継がれておらず、型を探し出すことからの再出発だった。しかし、著名なあんこ職人にあんこのつくり方を教わるなど同市の産業の歴史と伝統を今に伝えるお菓子をよみがえらせるため、試行錯誤を重ねた結果、もなかの中に小豆の風味が残るやさしい甘さのあんこが詰まった郷土の誇りの復刻が実現した。
最新号を紙面で読める!