日本商工会議所は7月17日、重要政策課題などを話し合う夏季政策懇談会を都内で開催した。会合には、日商の小林健会頭をはじめ、副会頭、特別顧問、常議員・議員、各委員会委員長、専門委員長など63人が出席したほか、全国の商工会議所からオブザーバーとして215人が参加。「地域経済の好循環を支える中小企業と地域の稼ぐ力の強化に向けて」を全体テーマに活発な討議を行った。
小林会頭は冒頭のあいさつで、「各地を訪問する中で中小企業という観点では、『賃上げ』そして『デジタル』が大きな課題であり、地域という観点では『人口減少』への危機感が強く感じられる」と指摘。「われわれ民間が成長の原動力であるという当事者意識を持ち、新しい視点からの変革に挑んでいこう」と呼び掛けた。
会合は2部構成で開催された。第1部では「中小企業の自己変革と持続的成長に向けて克服すべき課題」「人口減少に直面する地域経済活性化に向けて克服すべき課題」の二つの視点で討議を行った。第2部では、三つの分科会に分かれて「商工会議所の活動強化」をテーマに、各地で取り組んでいる商工会議所のデジタル化や経営支援体制強化、商工会議所の人材確保・育成、地域活性化、女性活躍などの事例を共有するとともに商工会議所に求められる役割や活動などについて意見交換を行った。
第1部ではデジタル化による生産性向上と省力化投資について「小規模事業者は、デジタル化や省力化投資がまだ進んでおらず、取り組みの余地は大きい」「人手不足を解決するための生産性向上に向けたデジタル化・省力化・自動化や賃上げ原資の確保に向けた付加価値向上には、成長投資を後押しする税制措置が不可欠」といった意見が出された。
労務費を含む価格転嫁の推進については「中小企業の労働生産性が低いといわれるが、その背景には大企業に成長の果実を吸い取られている現状(価格転嫁力の弱さ)があることを訴えていく必要がある」「価格転嫁の商習慣化に向け、地域でパートナーシップ構築宣言企業が増えることが重要。商工会議所役員・議員に協力を求めることが必要である」といった指摘があった。
産業立地の促進や地域をけん引する中堅企業支援については「地元で就職する若者が減っている。良質な雇用の場を創出しつつ高校を卒業した人に地元に就職してもらうほか、大学などに進学した人にUターン就職をしてもらうことも重要」「中堅企業を支援することにより、雇用や所得、消費拡大など、地域経済の好循環が創出されることが期待される。一方、中堅企業支援の拡充により、中小企業支援が縮減されないようお願いしたい」といった声が寄せられた。
観光地域づくりの推進やインバウンド需要の地域への波及については「地域の組織同士は、さまざまな利害が絡むためバラバラの方向を向いている場合が多い。商工会議所は、地域の多種多様な関係者をつなぐコーディネーターの機能を持っている団体であり、観光分野で果たす役割は大きい」「観光消費によって地域内の経済循環を加速させ、賃金に反映させる必要がある。人的資源や財源が限られる中、データを用いて現状分析し、効果的な施策を打つことが必要」といった意見があった。
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