Q 当社では、SDGsやESG投資に対応する観点から積極的に環境対応を進めているところですが、企業による環境対応が「グリーンウォッシュ」に当たるとして批判されるケースがあると聞きました。どのような点に注意すればよいでしょうか。
A 環境負荷軽減の取り組みを進めることが企業にとって重要なアピールポイントとなる中、客観的で合理的な根拠を欠いているにもかかわらず、「エコフレンドリー」や「環境に優しい」などのうたい文句を商品の広告宣伝などに用いて、あたかも環境負荷が軽減されているものであると消費者を誤解させるケースが明らかとなり、問題視されるようになりました。一定の規制を導入する国もあり、規制枠組みについて理解することが必要です。
グリーンウォッシュとは
グリーンウォッシュとは、環境に優しいという意味合いの「Green」と、事実関係などをごまかす・隠蔽(いんぺい)するという意味合いがある「Whitewashing」を掛け合わせた造語です。定まった定義はありませんが、一般的には、広告や宣伝において、実際以上に環境負荷軽減に取り組んでいるように見せかけ、消費者の当該企業や商品の環境負荷の程度に関する認識を誤らせる行為を指します。
グリーンウォッシュという言葉が使われ始めたのは1980年代とされます。その後、環境意識の高まりや、これに伴う環境負荷の低い商品に対するニーズが高まるにつれて、グリーンウォッシュの問題性が広く認識されるようになりました。
例えば、マクドナルドは2018年に英国などにおいて、プラスチック製ストローを、環境配慮のため100%リサイクル可能な紙製ストローに変更するとしたものの、実際にはリサイクル可能な紙の厚さではなかったことによりリサイクルできないものであったことが内部文書に基づき発覚し、グリーンウォッシュであるとの批判を受けました。
09年に発表されたレポート(ʻUnderstanding and Preventing Greenwash:A Business Guideʼ)では、グリーンウォッシュ該当性を確認するためのチェックリストが示されています。質問に回答することでグリーンウォッシュ該当性を確認でき、それぞれの質問に説明文も付いているため、自社の商品などに対するグリーンウォッシュ該当性が危惧される場合には、一つの参考になるものと思われます。
各国における規制などの導入
グリーンウォッシュは消費者の購買行動に影響を与えるものとして、国境をまたいで問題視されています。各国では規制やガイドラインなどが導入されるようになってきました。
日本国内では、グリーンウォッシュ対策のために策定された新たな法令はありませんが、景品表示法や環境省の「環境表示ガイドライン」などにより一定の対応が取られています。例えば、消費者庁は22年12月、生分解性プラスチック製品を販売した業者に対し、根拠が薄弱であり景品表示法上の優良誤認などに当たるとして、措置命令を発出しています。
また、金融庁においても「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」を改正しました。ESG投信に該当しない商品にESGやグリーンに関連する名称を付してはならず、ESG投信については目論見書でESGの具体的内容を開示することを求めるなど、グリーンウォッシュ対策を進める姿勢を示しています。
各国は、企業に対して一定の情報開示や根拠の明示などを求めることで、グリーンウォッシュ対策を図っています。しかし、これらの規制はグリーンウォッシュとして指摘を受ける問題のごく一部に対応するものに過ぎません。
企業の立場にあっても、あるいは消費者の立場にあっても、販売・購買活動に際して当該商品やサービスがグリーンウォッシュに当たらないかという点につき、前記のチェックリストを参照するなどして慎重に吟味・対応する必要があります。
(弁護士・苧坂 昌宏)
最新号を紙面で読める!