この数年、新札の肖像に決まったことを機に、渋沢栄一がさまざまなシーンでクローズアップされています。実業による近代日本の立役者として有名ですが、著書『論語と算盤(そろばん)』を読むと、出世や金もうけ一辺倒になりがちな世の中を、『論語』に裏打ちされた道徳で律するという彼の生き方が伝わってきます。
多くの人は自分の人生のわずか30~40年の経験で物事を判断しがちですが、渋沢栄一は2500年前の孔子の考え方に真実を見いだし、経済活動の背景に『論語』を忘れない生き方を貫き、周囲にも多大な影響を与えたのです。『論語と算盤』が100年も前に出版された本であるにもかかわらず、現代のビジネスマンの心に響く背景には、『論語』が古くから日本人の心のよりどころとされ、私たちの価値観に染み込んでいるので、読んだ時にストンとふに落ちるのだと思います。
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