中小企業庁はこのほど、中小企業のM&Aに関する指針を示した「中小M&Aガイドライン」を改訂した。 同ガイドライン(第3版)では、事業承継の手法としてM&Aが定着する中、不適切な譲り受け側の存在や経営者保証に関するトラブル、M&A専門業者が実施する過剰な営業・広告などの課題に対応し、中小M&A市場における健全な環境整備と支援機関の支援の質の向上を図る観点から、中小企業向けのガイダンスおよび仲介者・FA(ファイナンシャル・アドバイザー)向けの留意事項などを拡充する内容となっている。
併せてM&A支援機関登録制度により登録された支援機関は今年度から手数料体系の公表が義務付けられたことに伴い、ウェブサイトで同制度の手数料体系の公表を開始。中小企業に向けてはチラシを作成するなどでトラブルに巻き込まれないよう注意喚起を行っている。 ガイドライン改訂のポイントは次の通り。
1仲介者・FAの手数料・提供業務に関する事項
〈中小企業向け〉手数料と業務内容・質などの確認の重要性、手数料の交渉の検討などについて追記。
〈仲介者・FA向け〉手数料の詳細、プロセスごとの提供業務の具体的説明、担当者の保有資格や経験年数・成約実績の説明などを求める。
2広告・営業の禁止事項の明記
〈仲介者・FA向け〉広告・営業先が希望しない場合の広告・営業の停止など。
3利益相反に係る禁止事項の具体化
〈仲介者向け〉追加手数料を支払う者やリピーターへの優遇(当事者のニーズに反したマッチングの優先実施、譲渡額の誘導など)の禁止。情報の扱いに係る禁止事項の明確化。禁止事項は仲介契約書に仲介者の義務として定める旨を明記。
4ネームクリア・テール条項に関する規律
〈仲介者・FA向け〉譲り渡し側の名称の譲り受け側への開示(ネームクリア)前の譲り渡し側の同意の取得。譲り受け側との秘密保持契約の徹底。テール条項(契約期間終了後も手数料を取得する契約)の対象の限定範囲・専任条項がない場合の扱いを明確化。
5最終契約後の当事者間のリスク事項
〈中小企業向け〉最終契約・クロージング後に当事者間でのトラブルとなり得るリスク事項の解説。
〈仲介者・FA向け〉リスク認識時、最終契約締結前に、当事者間でのリスク事項についての依頼者に対する具体的説明を求める。
6譲り渡し側の経営者保証の扱い
〈中小企業向け〉士業など専門家、事業承継・引継ぎ支援センターや経営者保証の提供先の金融機関などへのM&A成立前の相談や最終契約における位置付けの検討などの対応について明記。
〈仲介者・FA向け〉士業など専門家、事業承継・引継ぎ支援センターや経営者保証の提供先の金融機関などへの相談が選択肢となる旨の説明、最終契約における経営者保証の扱いの調整を行う。
7不適切な事業者の排除について
〈仲介者・FA・M&Aプラットフォーマー向け〉譲り受け側に対する調査の実施、調査の概要・結果の依頼者への報告。不適切な行為に係る情報を取得した際の慎重な対応の検討。業界内での情報共有の仕組みを構築する必要性を明記。
詳細は、こちらを参照。
最新号を紙面で読める!