日本商工会議所は2月21日、「東日本大震災からの確実な復興・創生に向けた要望~復興・創生期間の終了を見据えた支援と自立した地域経済の再生に向けて~」を取りまとめ、政府など関係各方面に提出した。同要望書では、10年年間と定められている復興・創生期間が残り2年余りとなっていることから、復興目標の完遂に向け、復興・創生期間後も省庁横断的で一元的な対応を可能とする支援体制の継続を求めている。(関連記事4面、5面に)
2月28日には、日商の三村明夫会頭、東北六県商工会議所連合会の鎌田宏会長(仙台・会頭)、東日本大震災沿岸部被災地区商工会議所連絡会の高橋隆助代表(原町・会頭)が復興庁に渡辺博道大臣を訪ね、要望書を手交した。同要望書では、東日本大震災からほぼ8年が経過したが、復興が遅れている部分については、復興を加速するとともに、現在の復興・創生期間終了後の2021年度以降も国における一元的な対応を可能とする支援体制の継続が必要と強調している。
また、福島の復興・再生を果たすには、原発事故の解決が不可欠と指摘。国主導の下、科学的知見を総動員して事故の収束に全力を尽くすことはもとより、汚染水や汚染土壌の早期完全処理に万全を期すよう要請している。さらに、農林水産業や観光などを中心に、安心・安全に関する風評が根強く残っていることから、科学的根拠に基づく食品の安全性と安心に関する正しい情報発信を一層強化するとともに、日本産品に対する需要の大きい諸外国・地域による輸入規制を撤廃するための外交交渉努力を強化するよう求めている。
一方、事業再開した被災事業者には新たな経営課題も発生し、内外の経済環境変化のあおりを受けた資金繰り問題、深刻化する人手不足、事業承継難などの問題が顕在化している。このため、展示商談会の開催や販路開拓のための専門人材の確保といった支援の継続・強化、人手不足対策として、UIJターンの促進支援、ITの導入支援、加えて、資金繰り支援の強化といった国や自治体による柔軟かつきめ細かな支援が必要としている。
地域振興の観点からは、定住人口の増加が見込めない中、交流人口の拡大が重要となっているため、ラグビーワールドカップや東京五輪などを好機として東北への誘客・消費拡大に向けた取り組みを強化すべきと指摘。交流人口の拡大に向けて、人々の移動を支える交通インフラの整備とともに、事故・災害時における代替手段確保の点からも、ミッシングリンクの解消や広域交通ネットワークの整備・充実を要望している。
渡辺大臣は、復興庁の後継組織に関して、「安倍首相から、各省庁の総合調整と司令塔的役割を担い、政治的責任とリーダーシップを発揮する組織を検討するよう指示があった」とコメント。後継組織については、今後、検討を進めていく考えを示すとともに、「いただいた要望事項は、引き続き実現に向けて取り組んでいきたい」と述べた。
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