求人広告費用を出す余裕がない。給与や待遇で他社にかなわない。求人募集の広告を出しても応募者が来ない……。多くの中小企業がこんな悩みを抱えている。そこで、求人広告ライターの関根コウさんに、求人広告原稿の書き方から広告費用0円でも応募者を集める方法、自社を魅力的に見せる面接の仕方まで、今すぐに「結果を出せる」ノウハウを伝授してもらった。
関根 コウ(せきね・こう)
一般社団法人求人広告ライター協会 代表理事
求人広告ライター協会HPはこちら :https://saiyo.or.jp/
誰にでも書けそうな文章で求人広告の効果が激変する
ここ数年、多くの中小企業では、求人広告を出しても応募がないか、あっても1人、2人という状況が続いているのではないかと思います。もしかしたらそれは、自社の魅力をうまく伝えられていないだけかもしれません。
そこで今回は、求職者の応募を増やし、そこから採用に結び付けるための手法をお伝えしたいと思います。「求人広告費用を出す余裕がない」「うちは給与も待遇も他社に比べて見劣りする」といった企業でも大丈夫です。広告費0円でも、他社より条件が悪くても、これまで出していた求人広告の文章を見直すだけで、多くの応募者が集まってきます。
以前、私の講演会にご参加いただいた浜松市の水道設備会社が、その後、広告費0円で採用に成功しています。最後にご紹介しますが、誰にでも書けそうな文章です。しかし、これからお伝えするように書き換えることで大きな効果が出せるのです。誌上セミナーの後、御社の求人広告も劇的に変わります。
求職者が興味を持つきっかけづくり
まず、ほとんどの転職希望者は無職ではなく仕事をしていて、ほかにいい仕事が見つかったら転職しようという人が多いです。そのため、いい採用をするためには図1(次ページ)の下二つのゾーンの人を取り込んでいく必要があります。今すぐ働きたいという人は、ハローワークに求人を出したらすぐに応募してくるので、苦労しなくても採用できます。
求人広告は、求職者に「この会社で今すぐ働きたい」と思ってもらうものではなく、「この会社の面接を受けてみようか」程度のきっかけづくりだと考えてください。そのためには一人でも多くの人に自社の魅力を知ってもらい、「ちょっと話を聞いてみてもいいかな」と思わせる必要があります。そこで、そのきっかけをつくるための情報を増やしていきましょう。
そこで重要になってくるのが、図2にある「四つの軸」です。中身のない求人広告の多くは、オレンジ色の条件や待遇だけで構成されています。でも、人が働く動機付けは、大きく分けて四つあります。それは、どんな企業なのか、どんな人が働いているのか、仕事にどんな魅力があるのか、そしてどんな条件なのか、です。
応募者がない求人はオレンジのことしか書いていなくて、どんな職場、企業、仕事なのかが薄い。せっかく四つの訴求ポイントがあるにもかかわらず、4分の1の訴求に落ちてしまっています。応募のきっかけを増やすためにも、四つの軸全ての情報を集めましょう。
見えを張らずにありのままを書く
次は四つの軸で集めた情報のうち、どの情報が求職者の心に刺さるかを考えることです。求職者が知りたい情報とは、その会社に転職することで「現状を改善してくれるか」「仕事の不安を解決・解消してくれるか」「望みをかなえてくれるか」の三つです。求人広告では、うちの会社に入ったらあなたの不満を解消しますよ、希望をかなえられますよといった展開をしなければなりません。
もう一つ重要なのがテンプレートの文章を使わないことです。もし他社も同じテンプレートを使っていたら、社名と住所、給料が違うだけで、ほかは全く同じ内容の求人広告が並ぶことになります。テンプレートの内容には求職者の心に届く情報は一つもありません。加えて、インターネットの求人広告サイトでは、AIがこの広告の内容が有用かどうかを判別していて、オリジナルの内容以外、つまりテンプレート広告は評価を落としています。
ちょっと難しいことを言いましたが、要はテンプレートでなければいいのです。他社にはない業界唯一の特徴を探す必要もありません。ありのままでいいので、まず情報を集めてください。その上で、その情報の中から自分たちが提供できるものを、ありのまま一回書いてみてください。それが情報を増やすということなのです。 ありのままに書くと、そこに該当する求職者が必ずいます。恐れないでください。見えを張って格好良く書きたくなりますが、それで応募が来て面接もうまくいって採用できても、入社後まで見えを張り続けることはできません。思っていたのと違ったと、入社してすぐに辞められてしまう可能性もあります。
タクシードライバーの求職者数が2倍に
私は今、日本で一番人口が少ない鳥取県で求人の改善に取り組んでいるのですが、タクシー会社のドライバー募集の求人広告でも、ありのままに書きました。すると、広告を出した4カ月後に出た鳥取県の人材市場レポートで、タクシードライバーの求職者数が、それまでの200人から448人と、2倍以上に増えていました。 その時の求人広告が図3で、これも何も飾らずありのまま書いた文章です。下には「国のルールで決められた勤務時間を遵守します」「一生役立つ二種免許を全額会社負担で取得」「道が苦手な方でも安心!全社カーナビ・GPS・ドライブレコーダーを搭載」について書いてあります。
なんてことのない文章ですが、先ほどの四つの軸全てを網羅していて、不安の解消も含まれています。そのうちのどれかが誰かにひっかかる。つまり、会社に興味を持ってもらうきっかけを増やしたことになるのです。この流れで文章を書けば、応募数が増えると思います。1人よりも2人、2人よりも10人の応募者から選考した方が、より良い人材を採用することができます。
四つの軸と五感で情報を集める
ここまでは理論をお話ししてきましたが、ここからは実践に移っていきます。まず、いろいろな角度からのきっかけを増やすための、社内情報の集め方についてお話しします。そこで「求人が上手くなる社内リサーチ質問集」(図4・前ページ)をご用意しました。四つの企業軸のうち、青が企業軸、緑が職場軸、赤が仕事軸に関連した質問です。
これを基に、採用を予定している部署のメンバーや、求人内容とポジションが近い人に質問してみてください。聞きやすい質問だけでも構いません。採用担当者であるあなた自身でも答えられる質問もあります。
この質問集は実際の私の講演会でもワークショップ形式で使用しています。発表してもらうと、一つとして同じ話は出てきません。発表した参加者も「うちの会社からしたら普通の話だけれど、なぜかウケてる!」と、意外な発見もあるのです。
次は、別の視点から求人広告に入れる内容を考えてみます。それが「五感」で感じたことを入れ込んでいく方法です。そのために使うシートが図5です。ここに、ご自身の職場の情報を五感で書き出してください。
自分の会社がどんな会社なのかを、何が見えるか、聞こえるか、触れるものは硬いのか柔らかいのか、味覚はランチに何を食べるとか、どんな匂いがするのかといった五感で文字にしていきます。これはオフィスでも現場でも構いません。参考までに薄い字で質問例を書いていますが、それにこだわらなくて結構です。また、ここでは「職場」のシートだけを出していますが、「企業」と「仕事」についても、同じように五感で書いていってください。
そして、これを職場のほかの人にも書いてもらってください。男性目線、女性目線、部長目線、課長目線、昨日入ったばかりの新人の目線によって、職場の雰囲気や感じ方はかなり異なります。
そうやって出てきた話をハローワークや求人サイトの求人広告に入れてみてください。どう書いたらいいか分からないという人もいますが、大丈夫です。社内リサーチで集まった情報を四つの軸を元に均等に入れ、五感の情報を箇条書きにするだけでも内容が充実します。まずは最初の一歩を踏み出すことです。
応募者が集まってきたら求職者目線でその後を対応
ここまでやれば、必ず応募が集まってきます。ここからが本番で、驚くべき真実を言いますと、求人広告の中身を、求職者はしっかり読んでいません。心にひっかかった文章だけを見て応募してくる人がほとんどです。応募者が御社の状況や仕事内容をしっかりと把握していなくても気にしないでください。
ここから重要になるのは、応募者への対応です。転職希望者が1回の転職で応募する会社数は、平均で8社程度と言われています。つまり、御社以外に7社に応募していることになります。そのため、応募から面接に誘導するための初動対応が重要になってきます。ここでは、応募者の立場で考えることが大事です。
応募者に電話する場合、昼間の時間帯は仕事中なので出てくれません。朝と夜の時間帯に電話するのは担当者が大変なので、狙い所は昼休みです。とはいえ、出てくれないこともよくあります。スマホに着信記録は残りますが、応募者のスマホに御社の電話番号が登録されていないと、番号しか表示されず、どこからの電話なのか分かりません。応募者は「用事があれば、またかかってくるだろう」と思っているので、必ずこちらからかけ直してください。
もう一つは返信メールの書き方です。スマホの受信メールのリストは、最初の2行しか本文が表示されません。そのため「関根様」で改行して、あいさつ文を書いてしまうと、用件が見えません。さらに1行空けてしまうと、名前しか 表示されません。名前で改行せず、用件を簡潔に書き始めることで、すぐにメールを開いてもらいやすくなります。
また最近は、家族の反対で入社を辞退するケースがあります。そこで、家族への手紙を作成し、面接の際に渡して、家族に見てもらうようお願いしている会社もあります。内容は、自社に対するご家族の不安を払拭するようなものです。図6にその一例を載せたので、参考にしていただければと思いますし、そのままマネして使っていただいても構いません。
まとめになりますが、従業員を巻き込んだ四つの軸や五感の情報集めは、会社の現状を理解するためのもので、いわば自社の通知表です。いいところは伸ばし、悪いところは直していくことで、従業員の定着率アップにつながります。これは単に人集めのためだけでなく、自社の企業文化に合うのはどんな人かを理解することにもつながってくるので、ぜひ取り組んでいただけたらと思います。
事例
広告費0円で応募者数アップ
静岡県浜松市◆株式会社牧野配管 牧野共治社長
給与面で民間企業に比べて提示額が低く、求人に苦戦していました。求人サイトに4カ月60万円で求人広告を出しても間違い応募が1人で採用はゼロ。そんなときに関根さんの講演会に参加し、アドバイスを受けて広告文章を改善。求人サイトの無料枠で掲載したところ、3カ月で16人の応募があり、3人を採用することができました。