中小企業庁は10月、知的財産に係る取引における基本的な考え方と参考事例などを示した「知的財産取引に関するガイドライン」および「契約書のひな形」を改正し、公表した。同ガイドラインは、不適正な取引慣行の抑止のため2021年に策定されたもの。今回の改正では、「第三者の知財権の侵害責任の所在、紛争解決責任の分担に関する考え方」「帰責事由のない受注者が発注者に求めるべき権利」「発注者の“指示”にどのような行為を含むか」などを明確化した。
同ガイドラインは、知的財産に関わる取引について、発注者と受注者間に片務的な契約の締結、ノウハウの開示強制などの不適正な取引慣行が存在していることから、20年7月に設置した「知的財産取引検討会」による議論を踏まえ、中企庁調査、公正取引委員会報告書、下請Gメンヒアリング調査、特許庁相談事例を基に21年3月に策定された。
ガイドラインでは、「契約締結前」「試作品製造・共同開発等」「製造委託・製造販売・請負販売等」「特許出願・知的財産権の無償譲渡・無償許諾」の四つの場面で発注者が注意すべきポイントを事例と共に提示。知財取引を行う際の「契約書のひな形」として契約種別ごとの契約条項のサンプル(秘密保持契約・共同開発契約・開発委託契約・製造委託契約)も公表している。
22年4月には「知財Gメン」を配置し、知財取引に特化してヒアリング調査を実施。同調査の中で、第三者との間に知的財産権に係る紛争が生じた場合、その責任や負担の一切を受注者に例外なく転嫁する(責任転嫁行為)と解釈され得る契約を締結していた事例が複数発見されたことから、これを抑止するために今回のガイドライン改正が行われた。
改正の内容は、実際の取引において発生し得るシチュエーションを想定しつつ、状況に応じた適切な責任分担の考え方や、帰責事由がない受注者が発注者に対して行使すべき権利などについて詳細な解説を追記している。
具体的な改正のポイントは次の通り。
・第三者の知的財産権を侵害しないことに係る保証責任や、その保証に当たっての調査費用などの負担については、発注者・受注者が果たした役割などに応じて適切に分担し、受注者に一方的に転嫁してはならないことを明確化。
・発注者から受注者への「指示」は、口頭での助言や情報提供のような正式な書面によらない形式のものも含み得ることを明確化。
・受注者に帰責事由がないにもかかわらず、受注者が第三者から訴えられた場合には、発注者は、受注者からの目的物の仕様決定に係る経緯などの開示要請や、第三者との間に生じた損害賠償についての求償などに応じるべきであることを明確化。
また、契約書ひな形については、紛争が生じた場合の責任分担の考え方を明記した条文を契約に盛り込むに当たって、参照すべき汎用(はんよう)的なモデル条項を新たに加えた。
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