重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)の制度ができて、来年は50年を迎える。この制度は1975(昭和50)年の文化財保護法の改正を契機に、城下町・宿場町・門前町・寺内町などの伝統的建造物群およびこれらと一体をなして歴史的風致を形成する環境を保全するための制度である。文化財としての建造物を単体ではなく面(まち)として保存しようというもので、制定時は画期的な制度として注目された▼
保存地区の指定は今や43都府県、106市町村の129地区である。その基準は、伝統的建造物群が全体として意匠的に優れており、地割りが良く旧態を保持していること、周囲の環境が地域的特色を顕著に示していることなどである▼
私は文化財の専門家ではないが、各地の重伝建地域は観光との相性が良く、日本遺産などの認定地域も多いことから多くの地域を訪ねている。最近訪れた群馬県桐生市(桐生新町)もその一つである。桐生は、今から約400年前に天満宮を起点とする町割りができ、本町1・2丁目には現在でも織物関係の蔵や町屋、のこぎり屋根工場など歴史的な建造物が多く見られる。当時の土地の区割りもよく残されていることから2012年に重伝建に認定された▼
「西の西陣・東の桐生」といわれるほどに織物業で栄えた地域で、今でも200棟前後ののこぎり屋根工場が残る。しかし、産業の衰退、人口減少や高齢化、さらには居住者の世代交替などにより、制度に対する住民意識も大きく変化してきている▼
新旧の住民、移住者と地元民などが共生する柔軟な多様性があってこそ、町が魅力的になる。半世紀にわたる制度は、今大きな曲がり角に立っている
(観光未来プランナー・日本観光振興協会総合研究所顧問・丁野朗)
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