西原商事ホールディングス(HD)は、傘下に廃棄物収集運搬業の西原商事、中間処理・リサイクル業のビートルエンジニアリング、情報管理サービスシステム開発業のビートルマネージメントの3企業を持ち、九州エリアで事業を展開している。産廃業界に先駆けて回収の仕組みをデジタル化し、「DXセレクション2024 準グランプリ」を受賞した。
廃棄物管理業としてデジタル化に挑戦
西原商事HD常務取締役の成田詩步さんは、紙の帳票で管理していた契約書や伝票などを、自社開発のシステム「bee-net(ビーネット)」に移行させた経緯を次のように話す。 「今でこそDXという言葉がキーワードになっていますが、私たちが『bee-net』を導入したのは、それ以前の2008年です。自社の業務改善という目的がありましたが、お客さま(事業系のゴミを排出する企業など排出事業者)の課題解決や業務改善の役に立ちたいという思いもあり、2年ほどの時間をかけて開発しました。課題解決の先には、このシステムが業界に広がり、新しい収益を生むという狙いもありました」
背景には、コンプライアンスの重視や産業廃棄物不法投棄を監視するためのトレーサビリティー強化とともに、00年代初頭に現れた「廃棄物管理業」の存在があった。 廃棄物処理業を営むためには、各自治体の許可が必要になる。多くは地場の業者で、商圏もほぼ地元に限られていた。一方、「廃棄物管理業」は廃棄物の処理を行わず、排出事業者と産業廃棄物業者の間に入って管理業務の代理人契約を結び、業者を選定したり事務管理などを代行したりする業務を行う。そのため自治体の許可は不要であり、「全国が商圏なのです」と成田さんは続ける。 「例えば東京に本社があるスーパーが北九州に店舗を出す場合、北九州の産業廃棄物業者に対する知見がありません。そこで、私たちのような『廃棄物管理業者』がお客さまの窓口となり、北九州の適正な業者を複数選んで相見積もりを取る作業を代行します。また廃棄物処理業者が遠方に本社がある企業の仕事を受けるケースでは、慣習の違いもあって“言葉が通じない”ことが多々あるため、管理業者が“通訳”の役割を果たします」と成田さんは説明する。
ところが、当時は電話とFAXに紙の書類が主流だったため、契約書や業者のライセンスの確認、見積書の精査、廃棄物処理の適正さの確認などの事務代行作業が膨大なものになった。「今後もこの業界で成長し続けるためには、『廃棄物管理業者』としてDXを進めていく必要性を感じました」と成田さん。
そして開発した廃棄物管理業界初のシステムは、多くの業者に受け入れられた。その後、追随するシステムが多く出現したが、「『bee-net』は、契約前の調整から実務のトレーサビリティー、請求支払いまで一貫して一つのシステムで完了できる強みがあります。これが、多くのお客さまに受け入れられた点」だと分析する。
現在、システムの開発はビートルマネージメント(BM)が中心となって行い、26 年4月を目標にリニューアル版「bee-netX」のリリースを予定している。「XではCO2排出量換算はもちろん、資源循環の追跡やAI活用など、企業のサステナビリティーに資する仕掛けを確立します」と話す。
アイデアを実現させる環境がDXの進化を促進
22年には収集運搬ドライバー向けのスマートフォンアプリ「Beetle Assist」を開発・導入し、効率の良い運行ルートの提示や排出事業場情報、回収品目・数量の表示、日報などのデジタル化と「bee-net」との連携を実現した。このアプリでは、運搬車両のタイヤのパンクトラブルなどを解決する画像情報も見られる。
23年、個人がLINEで粗大ゴミの見積もりと依頼ができるプラットフォーム「DUSTALK(ダストーク)」をリリース。開発を主導した社員は、アイデアを実現したいという理由でBMに入社した。この会社には手を挙げた人に「やってみろと言って育てる」(成田さん)懐の深さがある。
24年9月には資源物を対象とし、公平で透明性のある電子入札システム「ReBid(リビッド)」も稼働させた。 同社が先導したDXにより、業界では事業系ゴミ、家庭ゴミの収集から処分、回収ドライバー業務の効率化が大きく進んだ。
わが社のDX推進成功のポイント
課題
・2008年より以前、業務は電話とFAXと紙の書類というアナログが主流だった。手書きの書類は管理に場所を取り、探し出す時間が負担だった
DX推進のための工夫
・「bee-net」という廃棄物に関する情報を管理するクラウドサービスを自社開発。廃棄物に関する全ての情報を集約し、見える化を実現。契約書やマニフェスト(産業廃棄物管理票)の管理など手間の掛かる作業をデジタル化で軽減
・収集運搬ドライバー向け「Beetle Assist」、家庭から出る粗大ゴミ処理依頼の「DUSTALK」もリリース
成果
・「bee-net」は、24年時点2万2500事業場が登録。10年時点の600事業場から大幅に増えた。顧客の高い評価がうかがえる
会社データ
社 名 : 株式会社西原商事ホールディングス
所在地 : 福岡県北九州市八幡西区陣原2丁目2-21
電 話 : 093-641-2055
HP : https://www.nishihara-corp.jp
代表者 : 西原靖博 代表取締役
従業員 : 270人
【北九州商工会議所】
※月刊石垣2024年12月号に掲載された記事です。
最新号を紙面で読める!