地域に根差したビールづくりに挑戦 幅広い世代が活躍できる場を創出する
高津川リバービア株式会社 代表取締役 上床 絵理(うわとこ・えり)
二つの夢をかなえるため島根県に移住
私は島根県益田市に2020年、クラフトビールの製造や販売を行う「高津川リバービア」を立ち上げました。醸造所の近くを流れる高津川は、「日本一の清流」とも呼ばれる水質の良い一級河川です。きれいな水、イチゴやユズといった流域の農作物などを生かし、地域に根差したビールづくりに励んでいます。
もともと島根県やビールづくりとは縁のない生活を送っていました。福岡県に生まれ、大学卒業後は東京で働く国家公務員でした。公務員の傍ら、シニア人材の活躍の後押しをしようとNPO法人を立ち上げた際、活動拠点の近くにあった島根県津和野町の東京事務所を訪れたことが、縁の始まりです。事務所スタッフに誘われ、「高津川流域関係人口創出プロジェクト」に参加したことで、益田市をはじめとする高津川エリアの魅力を知りました。実際に訪れ、美しい自然やまち並み、人の温かさ、豊かな食に引きつけられたのです。
子どもの頃に祖父と同居していた経験から、シニアが生き生きと働ける場所をつくりたい、という強い思いを以前から持っていました。また、大人になってからビールをはじめとするお酒、お酒でのコミュニケーションの場が大好きになり、いつかはビールをつくってみたい、という願望もありました。益田市でおいしいビールを製造し、シニアの人たちにも関わってもらう―二つの夢をかなえる、そんなプランを思い付いたのです。幸い、共感してくれる仲間に恵まれ、公務員を辞めた後、当社を設立することができました。
自分が知った土地の魅力をより多くの人にPR
ビールづくりの勉強や発泡酒製造免許の取得、古民家を改修して醸造所の設備を整えるなど、準備を進め、21年にクラフトビールの製造を開始しました。味にこだわるのはもちろん、「益田マスカットエール」のように地名を商品名に入れる、高級感のあるパッケージにするなど、特徴を出しています。私のようにIターンしたスタッフ、地域のシニアスタッフも雇用し、活躍してもらっています。
コロナ禍の厳しい環境下での起業でしたが、当社の販売所のほか、近隣の酒店などの小売店、ECサイトで販売し、「家飲み」需要を取り込むことができました。23年には醸造所の近くに立ち飲み店をオープン。出来たてのビール、特産品を使ったおつまみなどを提供しています。広島でのイベントに出店したり、東京のデパートに取り扱ってもらったり、県外での販売も進めていきました。24年にはシンガポールに初めて輸出し、海外市場の開拓にも挑戦しています。
今後は醸造所の規模を大きくし、より多くのシニアスタッフを雇用したいと考えています。そして、国内外の人に私たちのクラフトビールを届け、高津川エリアを知ってもらい、実際に訪れてほしいと思います。スタッフや地域の人たちとともに、これからもビールを通じ、この土地の魅力を発信していきたいです。
会社データ
社名 : 高津川リバービア株式会社(たかつがわリバービア)
所在地 : 島根県益田市高津2-1-18
電話 : 0856-32-9641
創業 : 2020年
事業概要 : 酒類製造業(クラフトビール(発泡酒)製造、販売および飲食店事業)
HPはこちら : https://riverbeer.jp/
【益田商工会議所】
※月刊石垣2025年2月号に掲載された記事です。