国内では当面、人手不足が続く見通しとあって、女性労働者の増加に期待が高まっている。一方で、子育て世代の女性にとっては、仕事と家庭生活のバランスをどう保つかが現実的な課題となる。「都心の職場近くに保育園が欲しい」「ラッシュ時に幼児と一緒に電車に乗るより、勤務時間短縮を求めたい」など要望はさまざまだ。共通しているのは「時には自宅でも業務をこなせること」ではないだろうか。ICT(情報通信技術)の進展でそうした業務の対象が確実に広がっていると言える。
▼医療事務作業の受託で脚光を浴びているクラウドクリニック社は、出産などで離職していた医療職女性の再就労を実現している。川島史子社長は在宅医療でも医師が扱う書類の多さに着目。電子カルテの入力、医療情報の要約(サマリー)の作成代行をはじめ、煩雑な業務を遠隔支援するサービスを事業化した。
▼自ら医療業界で働いた経験のある川島さんは「高いスキルがあるのにフルタイムでは働けない」女性の多さに気付き、その活用を目指した。同社のスタッフは、看護師、介護福祉士、ケアマネージャー、医療事務担当者ら多岐にわたる。通常はオペレーションセンターで勤務するが、在宅ワークもできる。チーム制で成果物は相互にチェックするシステムになっている。
▼同社のように従来、自宅での仕事では不向きと思われた業務でも、ICTで可能になるものは少なからず存在すると想定され、未導入の企業も検討する価値があろう。勤怠管理はWEBの利用で容易に対応できる。通勤時間が不要になるのは、雇用者、労働者双方にとって利点だ。何よりも、経験を持った人材を労働力として受け入れられることの効果が大きい
(時事通信社取締役・中村恒夫)
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