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コラム石垣 2018年5月11日号 丁野朗

経済産業省が近代化産業遺産33群と続33群の認定を行ったのは平成19年、20年のことである。わが国の産業近代化の過程を物語る数多くの建築物、機械、文書などに着目し、これらが果たしてきた役割や先人たちの努力などの歴史的価値を顕在化させ、地域活性化の有益な「種」として、地域再生に役立てることを狙ったものである。西村幸夫東京大学大学院教授(当時)を座長とする委員会の下で、私も約2年間にわたる近代化産業遺産の現地調査や物語を紡ぐ作業に深く関わらせていただいた。

▼以来、10年を経過した今日、その流れは、平成27年度スタートの文化庁「日本遺産」や、同年、世界遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」などにも踏襲されている。

▼日本遺産は今、平成30年度の認定作業の途上であり、この連休明けには新たな日本遺産が追加されよう。既存54件の日本遺産の中には、近代の産業やまち並みなどをテーマとする10件を超える産業の物語がある。典型的な事例には「サムライゆかりのシルク」(山形県鶴岡市)や「播但貫く、銀の馬車道 鉱石の道」(兵庫県朝来市・姫路市)、「鎮守府 横須賀・呉・佐世保・舞鶴」、「一輪の綿花から始まる倉敷物語」(岡山県倉敷市)、「和装文化の足元を支え続ける足袋蔵のまち行田」などである。

▼地域は、その固有の資源や立地条件、優れた人材の力などにより、産業を興し都市を形成し文化を築いてきた。「一輪の綿花」のように、創業時はささやかな事業が大きな産業に発展し、現在の「美観地区」に象徴される文化都市を築いてきた。疲弊した地域は、今再び、地域の「産業の物語」を想起し、新たな時代を切り開く勇気をもってほしいと願う。

(東洋大学大学院国際観光学部客員教授・丁野朗)

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