産後デイサービスで女性をサポート 子育てしやすいまちづくりを目指す
合同会社たんぽぽプロジェクト 代表社員 作左部 紀子(さくさべ・のりこ)
「新人の母親」に必要な支援を
私は、看護師や看護学校専任教員として、主に子どもの看護に長く携わってきました。仕事と子育てをしながら認定心理士の資格を取得し、2017年から乳児院の心理判定員として、入所した子どもやその家族の心理的ケアなどを行っていました。そこで目にすることがあったのが、虐待やそれに近いことをする状態になり、苦悩している母親の姿です。わが子を思う気持ちは強いのに、子育てのスキルや周囲の手助けが不足した結果、追い込まれてしまったようでした。私自身も「母親とは世界で一番大変な仕事」と耐えつつ、子育てしていたことを振り返りました。子どもが生まれて「新人の母親」の頃に必要な支援が得られたら、子育てをもっと楽しいと感じられるだろうと考え、看護師と母親としての経験を生かし、産後の母親の子育て支援に携わりたいと希望するようになりました。
その頃、秋田県の産後ケア事業の実施率は全国最下位で、産後デイサービスができる施設はありませんでした。出産年齢層の女性は県外に離れていき、秋田県の出生数は加速度的に減少を続けていました。産後ケア事業の実施を市町村の努力義務と定めた改正母子保健法が21年から施行されることになり、秋田県でも産後ケア事業の必要性が高まる中、20年7月に当社を設立し、秋田駅近くに施設を建設して、12月に秋田県初の産後デイサービス施設「子ども子育て応援ハウスGrowing up」をオープンしました。
利用者と対話し不安解消
産後デイサービスでは、午前9時から午後4時までの利用時間に、授乳や上の子への関わり方など、産後の生活の困り事についての相談を受けます。「母親になった喜びを感じられるように、全ての母親に子育ての幸福感を」という経営理念の下、助産師や看護師・心理士・保育士・栄養士などの専門スタッフが、子育てのさまざまな課題に対応し、個別性に合わせた解決方法を提案しています。赤ちゃんを預かっている間、母親は一人で入浴し、アロマトリートメントを受けて個室のベッドで休養します。昼食や離乳食は手づくりで、どのサービスも好評です。私が最も大切にしているのは利用者との対話で、言葉や表情から母親の思いを感じ取り、不安を解消して自己肯定感を向上できるようなコミュニケーションを心掛けています。
施設のオープンから4年たった現在は、秋田市のほかに県内9市町から事業委託を受けています。延べ利用者数は1400人を超え、秋田県の産後ケア事業の発展に貢献できていると感じます。改正育児・介護休業法が施行され、育児休暇を取得した父親の育児に関する課題も明らかになってきたので、今後も子育て世代の生き方に寄り添った支援を提供し、秋田県が子育てしやすい県になって出生数が増加に転じることを目標に尽力してまいります。
会社データ
社名 : 合同会社たんぽぽプロジェクト
所在地 : 秋田県秋田市手形字西谷地68-3
電話 : 018-802-8272
創業 : 2020年
事業概要 : 産後ケアサービス業(デイサービス型産後ケアサービスを展開する施設の運営)
HPはこちら : https://tampopo-gu.jp/
【秋田商工会議所】
※月刊石垣2025年4月号に掲載された記事です。